笑顔は互いの緊張を緩和し、信頼関係の構築に役立つ。さらに笑顔には精神をリラックス状態に導く効果も期待される。ところが、マスクを着用していると顔の大部分が見えないため、つい無表情になりがちだ。緊張状態がほぐれず、無自覚なストレスが蓄積している恐れもある。

 笑顔には健康面のメリットもある。血行促進や自律神経調整の効果のほか、免疫力向上も期待されているのだ。書籍『やきとりじいさん体操』が提唱する「やきとりじいさん体操」も、笑顔で行うことが推奨されているが、これは笑顔によって酸素摂取量が増えるからだ。

「笑顔になると、口と鼻がふだんよりも広がるので酸素摂取量が増えます。酸素供給量が不足すると、体には様々なトラブルが発生するおそれがあるので、十分に呼吸しながら体操することは、体にとてもいいことです」(『やきとりじいさん体操』より)

 人間の笑顔は、表情をつくる顔の筋肉によってつくられる。上唇を引き上げる小頰骨筋、口角を引き上げる大頰骨筋、口輪筋など複数の表情筋が関連し合っている。背中や太もも、臀部のような大きな筋肉とは異なり、表情筋はひとつひとつが小さいのが特徴だ。筋トレの効果が出やすいのは大きな筋肉で、表情筋のような小さな筋肉は鍛えるのが難しい。

アフターコロナになっても
表情筋はなかなか元に戻らない

 コロナウイルス感染症の拡大が落ち着いた際には、マスクをとって生活することになる。表情筋が衰えた結果、重要な商談で笑顔がうまくつくれないという事態に陥るかもしれない。焦って表情筋を鍛えようとしても、元に戻すのは一筋縄ではいかないだろう。

 今から表情筋低下の予防を始めるのがお勧めだ。マスクの下で笑顔をキープする、口角を上げるということを習慣にしてほしい。『やきとりじいさん体操』を見習って、運動中に笑顔を意識してつくるのも効率的だろう。全身の運動不足解消と表情筋の低下予防を同時に行える。

 コロナ過の運動不足解消は、筋トレやエクササイズだけでは不十分な面もある。日常の動作を意識して増やさなければ、筋力は想像以上のスピードで衰えていく。ビジネスパーソンとして重要な表情筋の低下も忘れてはいけない。アフターコロナの日常を想定し、全身の筋肉を刺激するよう生活を見直してみてはいかがだろうか。

【参考書籍】

『やせる!楽しい!若返る!やきとりじいさん体操』(岡田麻紀著、ダイヤモンド社)