日本銀行日銀が正常化に踏み切る可能性は? Photo:PIXTA

今後のドル円相場に対する市場の大方の見方はドル高円安である。この見方を覆す要因があるとすれば日本銀行の金融政策正常化かもしれない。円安がインフレに拍車を掛けることになれば、岸田政権は円安を放置できまい。そうなれば、日銀が正常化に踏み切る可能性はあるのではないか。(みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)

2022年中には日本以外の
主要国は利上げ着手組へ

 2022年のドル円相場見通しの主流はどうやら円安・ドル高である。だが、「皆がそう思っていることはそうならない」のが相場の常であり、あえて円高方向のリスクを検討する必要性も感じる。

 もちろん、客観的事実だけを整理すればドル高相場の中での円安進行は最も説明がしやすいのは事実だし、筆者もそう思う。G7に限っていえば、英国、米国、カナダは利上げ着手組として先頭グループを走る存在であり、実際、これら3カ国の通貨が21年、非常に強かったことは周知の通りである。

 22年もその流れを引き継ぐとの見方は多い。ユーロ圏は出遅れているものの、年後半には量的緩和終了の議論に決着をつけ、やはり利上げ着手組に入ってくる公算が大きい。

 要するに、先進国では日本以外が利上げ着手組になる可能性が高い。これは消費者物価指数(CPI)の現状そのままである。

 携帯電話料金引き下げという特殊要因がなければ2%弱まで日本のCPIが高まるという主張に乗ったとしても、日本の劣勢は大きく変わるイメージではない。もはや「2%に到達していない国」が稀有なのであり、「相手がある話」の為替市場において円はどうしても敬遠されやすい。

 こうした見通しの概要は市場参加者の誰しもが論じる基本シナリオであろう。問題はそうならないリスクをどこに、どの程度見積もるかだ。例えば、米国の経常赤字拡大など、ドル需給の緩みが円高リスクになる可能性はある(もっとも、GDP比で見ればまだ顕著に大きいとはいえない程度の赤字に収まっている)。

 これは米国側に起因するリスクだが、日本側に起因する円高リスクは全くないだろうか。