ビットコインに触手を伸ばし始めたウォール街の巨人たち、機関投資家の参入相次ぐPhoto:PIXTA

2021年は、ビットコインの注目度が格段に上がった一年だった。日本ではさほど動きがないが、世界に目を向けてみると、ウォール街の大手金融機関や機関投資家が本腰を入れ始めたほか、エルサルバドルなどのように、国家がビットコインを保有する動きも見られるようになった。世界がビットコインに本気になる中、日本は動きが鈍いまま。世界の潮流に乗り遅れないようにする必要がある。(クラーケン・ジャパン代表 千野剛司)

世界に大きく遅れた日本の現状

 2021年、米国ではウォール街の投資家やシリコンバレーを代表する企業が暗号資産市場に参入し、2兆ドル(約230兆円)超の規模となった暗号資産の果実を得ようと、本気で動き出しました。一方、2014年頃までには世界最大のビットコイン取引所が拠点を持ち、2017年の強気相場を牽引(けんいん)した日本は、2021年、世界の暗号資産トレンドから取り残されてしましました。

 例えば、暗号資産の時価総額トップ10に現在、日本発のプロジェクトはありません(ビットコインの開発者が日本人であるという説もありますが、真相は分からないので置いておきます)。それどころか、日本の暗号資産取引所では、執筆時点で時価総額トップ10の暗号資産の半分の取り扱いすら始めていません。

 また、2021年は暗号資産マーケットが世界的に堅調であったにもかかわらず、日本は盛り上がりに欠けました。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)によりますと、データ取得が可能な2021年1月〜11月までの日本国内の現物の取引高は約34兆円。年後半にビットコインなどの価格が上がった2020年の1年間と比べると約3倍でした。これに対して、例えばクラーケンの現物の取引高は、同時期に約64兆円を記録し、2020年の年間取引高と比べても約5.6倍と大きく増えました。日本国内全体の取引高がクラーケン1社より低い上に、伸び率でも差をつけられているのです。

 確かに、日本にはマウントゴックス事件やコインチェック事件など、巨額ハッキングが頻発したという不幸な歴史がありました。また、2017年のバブル時に登場した「億り人」による単なる金もうけといったイメージも加わり、世間的に暗号資産に対するイメージは悪いのが現状です。しかし、「そうも言っていられなくなった」のが昨年、世界から突きつけられた現実です。

 

暗号資産データ収集サイトCoinMarketCapによりますと、現在9000種類以上の暗号資産が存在します。その中でも、米国の機関投資家や大手企業がとりわけ注目しているのは、やはり時価総額が一番大きなビットコインです。現在約235兆円ある暗号資産市場全体の時価総額に占めるビットコインの割合は、減少傾向にありますが、40%近くあります。最近は、インフレ懸念が高まっていることもあり、金と似た特徴を持つビットコインには「インフレヘッジ」としての役割が期待されています。


 本稿では、2021年に日本が沈黙していた間、米国の投資家と大手企業が暗号資産に対する目線をどのように変えたのかを解説します。