海外での貸し出し増に熱を上げ、国内の中小企業向け融資に消極的な姿勢を取る三菱東京UFJ銀行。合理的ともいえる経営方針が、逆に営業力の低下という負の側面を顕在化させ始めた。
経営と現場の意識の乖離──。
業界トップの三菱東京UFJ銀行(BTMU)では今、経営陣と営業店の行員の間で、見えない溝が静かに広がり始めている。その溝の深さを最も感じ取れるのが、国内の法人部門だ。
今年3月末の融資残高は、55兆円で3年前に比べ5兆円近く減少するじり貧の状況にある(図(1))。そこで、経営陣が各営業店に指示しているのが「活動時間の捻出」。コンプライアンス意識の高まりで、営業資料の作成などデスク業務ばかりに時間を取られる中、事務を効率化し、営業に費やす時間と訪問先を増やして実績を出せという意味だ。
そうした指示に、「本当に意味があるのか」と不満を持つ行員は少なくない。経営陣が本気で国内でリスクを取り、中小企業向け融資などの増加につなげようとは考えていないことを、現場の行員は見透かしているからだ。
たしかに、BTMUの決算を見ても国内の法人部門をてこ入れしようという意気込みは伝わってこない。