校舎をつなぐ体育館の上には中庭スペースが設けられ、リニューアル後も心の教育の礎となるアシステンツァ教育の言葉「共に喜び、共に生きる」が大きく掲げられている

川上武彦(かわかみ・たけひこ)
サレジアン国際学園中学校高等学校 募集広報部部長

1975年大分生まれ。大学卒業後、教育関連企業、私立高校講師を経て、和洋九段女子中学校高等学校に19年間勤務。社会科教諭を務めながら、2007年から同校の入試広報部長に。長年にわたり海外での学校広報イベントに参加する中で、現地駐在員の保護者ニーズに触れてきた。21年4月から現職。

 

インターナショナルクラスに集まった帰国生

聖ヨハネ・ボスコが創立したサレジオ会は、上智大学などを展開するイエズス会と並んで、世界的な広がりを持つカトリックの修道会だ。「女子にも教育を」という思いから18世紀後半に活動を始めたサレジアン・シスターズは、世界97カ国に学校を展開している。日本でも1929年から活動を始め、戦後、第一師団や近衛師団など軍関連施設が集まった赤羽台の地に、小学校と中学校、高校、幼稚園、短期大学が次々に設けられていった。いずれも共学化が進み、中高だけが女子校だった。2022年4月から校名を改め、男子生徒も迎え入れることにより、学園全体の共学一貫校化が完成する。

[聞き手] 森上展安・森上教育研究所代表
1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。
*森上教育研究所 「わが子が伸びる親の『技』研究会」では実力アップ「差がつく単問」集中講座 など受験生と保護者向けに教材動画を販売しています。詳しくはこちらをご参照ください。

――赤羽駅から「師団坂」を上って学園に着くと、まるで別世界のように視界が開けますね。

川上 ここから見下ろせる荒川に架かる橋は、鉄道ファンにはたまらないスポットだそうです(笑)。4月から中高は「サレジアン国際学園中学校高等学校」に校名を変更し、男子生徒が入ってきます。同じ構内に幼稚園から短期大学までありますが、これですべての学校が共学化します。

――中高はどのように変えていくのでしょうか。

川上 19世紀後半にイタリアで創立された本校の設立母体「サレジアン・シスターズ」は、世界中で女子教育を展開してきました。これからの生徒には多様性の中で育ってほしいと考えると、女子だけでは限界と判断しました。実際、97カ国にある学校もほとんど共学ですし、ローマの本部からも共学化のゴーサインが出ました。

 それからの理事会の動きは素早く、2年ほどの間に普通教室棟をフルリニューアルし、体育館の上には中庭スペースを設け、図書室や特別教室などのリニューアルも進めてきました。これまでの教育をゼロから考え直すとともに、共学化に合わせて、4月からすべての授業でPBL(Project Based Learning)型授業を導入し、英語で学ぶインターナショナルクラスを新設します。

――大きな取り組みですね。どういう受験生を対象に考えていますか。

川上 11月と12月に帰国生入試を行ったところ、51人が出願し、35人が入学手続きをしてくれました。最初から大きな反響をいただきました。男女半々で、全員が英検2級以上の保有者です。

 帰国生はアメリカからが一番多く、中にはスイスやブラジルからの方もいましたが、シンガポールやイギリスなど英語圏が中心でした。国内にあるインターナショナルスクールからも入学予定者がいます。お住まいは、湘南や多摩、千葉の湾岸からの方もいますが、東京の湾岸や都心のお受験エリアの方も多くいらっしゃいます。

――それは頼もしい。

インターナショナルクラスと国際化教育に向けた整備も急速に進む 1:常時BBCニュースを流すディスプレーの下にはさまざまな英語の書籍がそろう 2:修道会の創立者の名前が記された図書館 3:聖書に関する稀覯(きこう)本も
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