「一人っ子政策」でゆがんだ人口構成
「三人っ子政策」を実施できるのか

 21年の中国の出生数は、1062万人だった。1949年の建国以来、最低水準だ。人口ピラミッドは15歳未満の年少人口が減り、65歳以上の老年人口が増加する「逆三角形型」が鮮明化しつつある。

 加えて、中国の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数を示す指標)は、わが国(20年に1.34)よりも低いとみられる。米ウィスコンシン大学マディソン校の研究者である易富賢氏の調査によると、21年の中国の出生率は1.1~1.2程度と推計された。

 出生率が低い理由の一つに、公的年金など社会保障の未整備が考えられる。中国では農村と都市で戸籍制度が異なる。農村出身者は農村戸籍者として扱われ、社会保障や教育、就業機会などあらゆる場面で都市戸籍者との格差が拡大している。

 また、政府系シンクタンクである中国社会科学院が、「2035年に公的年金の積立金が枯渇する」との試算を公表している。戸籍問題などを原因とする未熟な年金制度を背景に、老後に備えて消費よりも貯蓄を優先する人が増えるだろう。共産党政権は少子化を食い止めるために「三人っ子政策」を実施しようとしているが、党の考えとは逆に、人口減少はさらに深刻化することが懸念される。

 少子化問題は、働き手=生産年齢人口(15~64歳の人口)の減少に関わる。13年に中国の生産年齢人口はピークになった。労働力が減少する状況下、経済全体で生産性を引き上げない限り、成長は難しい。

 共産党政権は15年、「中国製造2025」という産業育成策を発表した。半導体の自給率向上など、先端分野へ生産要素を再配分することを強化したのは、労働力の減少を生産性の向上で補い、経済成長を目指すためだった。

 しかし、最先端の半導体製造技術に関して、中国の実力は十分ではない。年金への不安が高まり、少子化は止まらず、貧富の格差も拡大している。共産党政権は先端分野の成長力強化よりも、「救済」に力を注がざるを得ないだろう。