中国の生産性向上は容易ではない
共産党政権は格差拡大の阻止が至上命令

 共産党政権が、経済全体で生産性を向上するのは容易ではないと考えられる。中国の経済成長率は低下して社会の閉塞感が高まり、構造問題は深刻化するだろう。

 ゼロ・コロナ対策により個人消費や生産は減少する可能性があるし、中国の港湾施設の稼働率が低下すれば、世界のサプライチェーンに負の影響が及ぶ。住宅価格の伸び率の低下も顕著であり、中国の不動産市況は一段と冷え込む可能性がある。そうした状況下、共産党政権が不動産やインフラ投資を増やして雇用を生み出し、消費を喚起して高い経済成長率を実現することは難しい。

 中長期的に考えると、少子化が中国の社会と経済に与える負の影響も増すだろう。懸念されるのが、コロナ感染拡大による人々の恐怖心理(防衛本能)の高まりだ。将来への不安から、出生率がますます低下する可能性がある。それが現実となれば、年金への不安から、老後のために貯蓄を重視する人はさらに増えるだろう。

 共産党政権は「共同富裕」を強化するなどして、成長を目指す企業家よりも、先行きを不安視する民衆に寄り添う姿勢を示さざるを得なくなるだろう。共産党政権が一党独裁体制を維持するためには、格差の拡大をなんとしても阻止しなければならず、生産性の向上は難しくなりそうだ。

 バブルの膨張と20年夏に実施された不動産融資規制の「3つのレッドライン」、および債務問題の深刻化によって、不動産投資に依存した経済運営は難局を迎えた。

 世界の工場としての中国の地位確立と、消費市場拡大を支えた人口は近く減少に転じ、逆ピラミッド型の人口構成が社会と経済の足を引っ張る展開が予想される。ひるがえってわが国も、バブル崩壊や不良債権問題、人口減少の加速、生産性の停滞、年金問題など社会保障の不安上昇などを経験している。中国がどう対応していくのか注目したい。