伝統製法で造った「飲めるみりん」が人気、コロナ禍だからこそ攻めの経営

――江戸後期の創業以来、伝統製法で造る御社のみりんは、“飲める”そうですね。

加藤 はい。深みのある甘味と複雑なうま味をお楽しみいただけます。そもそも、みりんは飲み物なんですよ。

――え、そうなんですか?

伝統製法で造った「飲めるみりん」が人気、コロナ禍だからこそ攻めの経営副社長・加藤祐基氏。1983年、岐阜県生まれ。東京農業大学応用生物科学部醸造科学科卒業後、白相酒造に勤務。2010年に実父が社長を務める家業の白扇酒造に入社。副社長に就任。

加藤 もともとみりんは、もち米と米こうじ、米焼酎で造る酒の一種で、焼酎で割って愛飲されていました。

 調味料として使われ始めたのは、江戸後期からです。当初は料亭で使われていましたが、戦後、一般家庭でも手軽に使えるようにと、多くの会社が、本来の原料に醸造アルコールや糖などを混ぜて造るようになりました。それで飲むためのものではなくなってしまったのです。

――その流れに乗らなかったわけですね

加藤 弊社は創業以来、伝統的な製法にこだわってみりんを造ってきました。主力商品の「福来純本みりん」は、もち米、米こうじ、米焼酎を60~90日間糖化させて手しぼりした後、3年間貯蔵熟成させて造ります。だから、まろやかで濃厚なみりんとなるのです。こうした本来のみりんを造っているのは、今や弊社以外にほとんどありません。

 原料の米焼酎を自作しているのも、おいしさの秘密です。私は弊社に入社するまで、東京農業大学で焼酎の研究をし、焼酎の蔵元で修業しました。そのノウハウをみりん造りにも持ち込んだわけです。

――料理に使ったらおいしそうですね

加藤 うま味が凝縮されているので、砂糖を使わなくても料理に優しい甘味と深みが出ます。それが評価されて、現在では京都や東京をはじめとした全国の高級料亭でご利用いただくようになりました。また、菓子やそばつゆ、佃煮、うなぎのたれなど、さまざまな加工食品や調味料の原料としても使われています。

 一般のお客さまにも支持されていて、売り上げの半分を占めます。1.8リットルで2750円と一般的なみりんと比べて高めですが、「一度使ったら他のみりんは使えない」と、健康志向や食材にこだわりのあるお客さまにリピートされています。