デビュー直後からの快進撃
そして無敗での連勝記録 

 最初に挙げられるのが、「デビュー直後からの快進撃」です。デビュー初戦の相手は長年にわたって将棋界を支え、今後も大棋士の系譜に間違いなくその名が刻まれるであろう「レジェンド」の加藤一二三九段でした。藤井竜王は当時わずか14歳でこの対局に臨み、見事勝利を収めました。

 デビュー戦でのレジェンドからの勝利。これだけでもセンセーショナルですが、そこから連勝を積み重ねて、その記録を29連勝まで伸ばしました。これは長い将棋の歴史における新記録です。史上最年少でのデビューから無敗での連勝記録は、将棋マスコミ以外でも大きく取り上げられ、注目を集めるようになっていきます。特に連勝記録に近づいた頃には、「あと○勝」とカウントダウンされるほどでした。

 連勝記録が途絶えた後も快進撃は続き、トップ棋士との対局も増えたにもかかわらず圧倒的な勝率を維持しています。

困難だった「リアルタイム観戦」「フル放送」
可能にしたのはネット中継

 まるで少年漫画の主人公のような活躍ぶりにプラスして、さらにブームを盛り上げた二つ目の要素が「ネット中継」です。

 将棋の対局時間は棋戦によって異なりますが、竜王戦では両者の持ち時間は8時間、名人戦では9時間となっています。このようなタイトル戦で両者がフルに持ち時間を使い切ると、対局時間は18時間オーバーと非常に長く、地上波のテレビ放送では主要な対局をフルで中継するのが困難でした。そのため、対局をフルで観戦できるのは、放送用の持ち時間の短いNHK杯などに限られていました。特に注目を集める竜王戦などのビッグタイトルは1局当たり2日制となっており、一日中放送しつづけるのは現実的ではなかったのです。

 しかし現在では、ネット配信の普及によって多くの対局をリアルタイムでフル視聴できるようになりました。たとえば、サイバーエージェントが運営するABEMA TVでは将棋専門のチャンネルが用意されており、注目度の高い藤井聡太竜王の対局が数多く放送されました。

 リアルタイムで観戦して応援できるという点はこれまでの将棋界では考えられないことだったため、ネット中継はブームを巻き起こす一つの要因と考えられます。

藤井聡太竜王の圧倒的経済効果!
おやつを食べただけで完売が続出?

 実は、上記の二つの要因で巻き起こった「藤井聡太ブーム」の経済効果には、目を見張るものがあります。

 ブームが始まって注目されるようになったのが、棋士が対局中に食べるおやつや食事などの「将棋メシ」です。特に、ABEMA TVなどのネット中継では各棋士が注文した食事が紹介されるため、SNSなどでも話題になるようになりました。

 具体的な事例をピックアップして見ていきましょう。