「これまで比較的有利だったのは、男性アスリートでした。しかし、2021年3月卒のデータでは、体育会系学生の中で人気企業への内定獲得率が男女で逆転し、女性アスリートのほうが評価され始めています。実際、女性アスリートのほうがGPA(学業成績)は高い傾向にあります。近年のさまざまな変化によって性別に対する企業側のバイアスが解け、男性的なイメージが強い体育会系の就職でも変化が起きていることは歓迎すべきです。また、統計的にはレギュラーの学生ではなく、サブメンバーの方が人気企業からの内定獲得率が高いと出ます。レギュラーにはスポーツ推薦が多く含まれ、結果として学業がおろそかになりがちな学生アスリートが人気企業に進みづらくなっているものと危惧されます」

 レギュラーメンバーよりサブメンバーのほうが明らかにGPAの成績が高いと束原氏は指摘する。大学名やレギュラーという肩書ではなく、学業面などが評価されるようになってきているのだ。

「レギュラーメンバーよりも、サブメンバーのほうが良い企業に入社するのは皮肉な気もしますが、現実的にプロアスリートなどになれなければ、大学スポーツで花咲いても生きていくのは難しいということです。それが野球やサッカーなどのメジャースポーツであってもです。もっと言えば『俺は監督や先輩から推薦してもらって就職できる』というメンタリティの学生は非常に厳しい。だからこそ、キャリアを見据えて学業や英語、ITスキルを身に付ける生き方をしないといけないし、われわれ大学側もそのような場所と制度を作らなければなりません。また、高校までの指導者や顧問も、このようなことを念頭に指導したり、進路相談にのってあげたりしてほしいですね」

 そんななかで現在ではラクロスなど新興スポーツに取り組んでいた学生の評価の高さが目立っているという。

「ラクロスなど日本の大学スポーツの文脈で比較的新しいマイナースポーツでは、練習場所もなければ指導者も少ない。その中で学生自身がいかに試行錯誤したかがクラブの強化やアスリートの成長にとっては重要になり、そうした試行錯誤によって獲得された何かが採用担当者の目に留まる可能性を高めるのかもしれません。実際に、直近の調査でもラクロス経験者は男女ともに人気企業からの内定獲得率が学生アスリート平均を有意に上回っています。戦略的に、そのような新興スポーツを大学で始めるのもよいかもしれません」

 時代の潮流がめまぐるしく変化する中、体育会系神話にも良い変化がもたらされることを期待したい。