就職に強いとされる体育会系学生。学生はもちろん、企業の担当者にも「採用するなら体育会系」と考える人は多いかもしれない。しかし、雇用や働き方が激変する現代において“体育会系神話”はまだ機能するのか。神話ができた過程や展望について『就職と体育会系神話』(青弓社)の著者であり京都先端科学大学健康医療学部准教授の束原文郎氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)
アメフトが支えた
体育会系神話の最盛期
「体育会系は就職に強い」という認識は多くの人が、なんとなく持っているだろう。しかし、それはどのような過程を経て、われわれに刷り込まれてきたのか。束原氏は次のように話す。
「体育会系学生が就職において望ましい資質を備えている、という神話は大正から昭和初期には確立していました。当時の大学進学率は約1~3%で、そのなかでも運動部に所属している学生は多く見積もっても1割程度。該当人口の0.1%ほどしかいない彼らは、知力も体力も兼ね備えたスーパーエリートだったのです。また、当時の公衆衛生的な観点からも、身体の健康が重視され、体育会系の学生はその基準にもっとも合致していたわけです」
強壮で健康な身体をスポーツで育み、また部内で社交性や折衝能力を鍛えた体育会系学生は最良の人材イメージであると戦前では認識されていたのだ。