クルードラゴン打ち上げ成功
なぜ民間企業が宇宙開発に?
2020年11月17日、宇宙飛行士の野口聡一さんが搭乗する民間宇宙開発会社スペースX社の宇宙船「クルードラゴン1号機」が、無事国際宇宙ステーションに到着しました。スペースX社は、今年5月に民間企業初の有人宇宙船の打ち上げに成功しており、今回のミッションの成功は、通算で2度目となる有人飛行の成功ということになります。
9年前にスペースシャトルの運用が終了して以降、NASAは宇宙飛行士を国際宇宙ステーションに届けるためにはロシアのロケットに頼らなければならない状況が続いていました。これからのNASAは自前の宇宙船を持つことなく、アメリカの民間企業のサービスを用いて、宇宙での実験を行う科学者を送り込むことができるようになります。
さて、スペースX社といえば世界2位の大富豪であり、天才起業家でもあるイーロン・マスク氏が経営する宇宙ベンチャー企業です。そしてZOZO創業者の前澤友作さんが、2023年頃にサービスを開始するとされる月旅行を予約した会社としても知られています。
民間企業が宇宙ロケットを打ち上げ、科学者を国際ステーションに届け、さらには民間人を宇宙に連れていく――。2020年代は、子どもの頃にSF映画で見た「夢」が現実となる時代になりそうです。
それにしてもなぜ、民間企業が宇宙開発に乗り出すのでしょうか。そして私たちが生きている間に、宇宙旅行は海外旅行のように一般的なものになるのでしょうか。その予測の手がかりを探すために、これまでの状況を振り返ってみたいと思います。
民間企業が宇宙開発に乗り出すきっかけは、アメリカ政府によるNASAの予算削減でした。NASAは1990年代、先行きの予算の制約の問題から、宇宙に自前でロケットを打ち上げるのではなく、代替アクセスの手段を検討し始めました。
宇宙開発には大きくわけると2種類あって、1つは人工衛星の打ち上げや宇宙ステーションでの実験など低軌道上で行うもの。もう1つは火星探査のような遠い宇宙を目指すものです。NASAが限りある予算の中から最大限の宇宙研究を行うためには、低軌道へのロケット打ち上げ部分を外部に委託して、コストを下げることが望ましい。そうした考えから、宇宙空間への輸送を外部委託する方法を模索し始めたのです。