ラガルドECB総裁欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、今は利上げの必要はないと主張するが… Photo:Pool/gettyimages

日本と同じくマイナス金利政策下にあるドイツでは、個人の預金口座にまでマイナス金利を課している銀行が555行に上っているという。そのことで預金者から各地で訴えられている金融機関だが、収益悪化に耐えられず、背に腹は代えられない状況に追い込まれている。このドイツの現状は、日本の近未来かもしれない。(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)

ドイツでは銀行555行が
個人の預金口座にマイナス金利

「マイナス金利の巨大な波が預金者たちを襲っている」。ドイツの金融比較サイト「Biallo」の最近のニュースレターはそう述べている。

 昨年4月の当コラムの記事『日本でも「個人預金にマイナス金利」のリアル、ドイツでは300行以上で適用』でドイツの預金金利の状況を取り上げてみたが、その後もマイナス金利を顧客に課す銀行が続々と増加しているのである。

 同サイトが調査したドイツ国内約1300行のうち、個人の預金口座にマイナス金利を適用している銀行は、1月7日時点で主要大手行を含む555行に上っていた。2019年夏の調査では30行だけだった。ところが21年だけで300行前後増えたという。

 555行の大半は、欧州中央銀行(ECB)の政策金利(預金制度金利)と同水準のマイナス0.5%を顧客に適用している。より深いマイナス金利(マイナス0.6%など)を課している銀行は23行で、その数は徐々に増加している。

 しかも多くの銀行が、マイナス金利を適用する預金額のしきい値を引き下げてきた。数年前は10万ユーロなど高めに設定する銀行が多かったが、現在、2万5000ユーロ以下へと引き下げた銀行は200行近くに上る。うち38行はしきい値を設けずに1ユーロからマイナス金利を課している。

金融機関から届いた手紙
預金者が激怒した中身とは?

 当然ながら、ドイツの預金者は激怒している。金融機関は軒並み、顧客に対して「悪いのはわれわれではなく、マイナス金利政策を実施しているECBなのです」と釈明している。

 また、顧客の反発を少しでも和らげようとして、彼らはマイナス金利という言葉はできるだけ使わず、“保管手数料”といった名称に言い換えている。

 預金者の怒りを汲んで、消費者団体などが各地で銀行を相手に「不当だ」と訴訟を起こしている。