
空港の電力供給などを担う東証スタンダード上場のエージーピー(AGP)が5月26日、筆頭株主の日本航空(JAL)による株式非公開化の株主提案に反対を表明した。AGPの設立以来60年以上続いたJAL支配体制がなぜ崩壊し、6月開催予定のAGP株主総会で両社が対立するに至ったのか。AGPの杉田武久社長と、同社取締役で元JAL社員の阿南優樹氏がダイヤモンド編集部の取材に応じ、水面下で繰り広げられたJALとの攻防戦を明かした。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
株主提案の裏にあるJALの思惑とは?
AGPの“独立”に揺れる羽田村の支配構造
――4月25日に日本航空(JAL)から株主提案がありました。当時、その提案をどう受け止めましたか。
杉田 正直、少し驚きました。というのも、われわれは1月17日にJALから、TOB(株式公開買い付け)による株式非公開化を含む協業提案を受け取っていました。その日以降、かなりの回数にわたり書簡のやり取りを重ねてきたのです。
しかし、非公開化後の経営方針は不透明で、エージーピー(AGP)としての成長戦略も明示されていませんでした。買付価格も株主提案公表日まで提示されず、少数株主の利益に資する内容かどうか判断できませんでした。2月以降は、社外取締役を中心とした特別委員会を設置して対応しましたが、委員からは「何を意図しているのか分からない」との声もありました。
さらに、JALは3月24日に提出したコーポレートガバナンス報告書で、当社の上場維持を支持する記述をしていました。実際の動きと矛盾する内容で、混乱したのは事実です。
阿南 私はJALに30年以上在籍しましたが、数あるグループ会社の中でも、なぜAGPにここまで強く関与しようとしているのか疑問に思っています。
JALは非公開化によって「脱炭素を加速させる」と主張していますが、具体的な施策について尋ねても、はぐらかされた印象が強い。正直、それは「協議を開始したかったのにAGPが拒否した」という形をつくるための作戦だったのではないかと感じています。
JALが主導するAGPの非公開化提案。その裏には“羽田村”の常識と、ガバナンス改革を進めるAGP経営陣との衝突があった。社長ポストや価格交渉を巡る対立、そして「支配の回復」への執念―。杉田社長と阿南取締役が、JALとの攻防戦の裏舞台を明かす。