ウクライナと台湾は国家間型リスク(台湾は複雑な立場ではあるが)、ミャンマーとアフガニスタンは内戦・クーデター型リスクという形で分類できるだろう。だが、米中競争など大国間対立が今後激しくなるだけでなく、依然としてテロとの戦いの構図が残されている世界においては、海外で活動する企業は社員の安全保護(国で言えば邦人保護・退避)をさらに徹底していく必要があろう。企業にとってもまずは社員の命と安全を第一に守る必要がある。

 国家間紛争やテロ、クーデターや抗議デモなど政治的暴力にもいろんな形態があるが、今回のウクライナ危機のような国家間紛争は、企業にとって予見しやすく、駐在員の退避を速やかに進めやすい。

 国家間紛争の主体は対立する二つの国家(多国間の場合もある)であり、双方とも対立国や国際社会に向けて政治的意思を繰り返し発信し、軍を国境近くに展開したり、ミサイル能力や核能力で威嚇したりするが、それらは人工衛星などでモニターされ、毎日のようにテレビやメディアで報じられる。

 また、外務省や各国日本大使館からも頻繁にそのリスクに関して発信されることから、企業はメディアや国からの情報を収集・共有しやすく、事態が深刻になる前に社員を退避させやすい。

内戦・クーデター型リスクの対応で
必要な情報の収集・分析・共有

 反対に、テロやクーデターなどは国家間紛争と比較すると、事態の発生を予見することが難しい。

 テロに関する警戒情報は欧米や南アジア、アフリカなど一部の国々で断続的に現地の情報・治安機関から発信されている。だが、今回のウクライナ危機のように日本のメディアで報道されることはほぼないため、企業にとって情報収集・共有は簡単ではなく、テロ発生後の退避となる可能性が高い。