ミスが多く報告される組織ほど良い

――スーッと無視、わかります……。ラグビー協会の話ではありませんが、セクハラなどハラスメントの被害者側が、組織から弁護士を通じて「口外禁止」を求められるケースをたびたび聞きます。

谷口 被害者が納得するような内容であればいいと思うんですけれど、口外禁止で蓋をして、どういう状況でそういうことが行われたかが共有されないということは、再発防止にならない。

 社会全体の心理的安全性の話でいうと、ミスとかエラーが多く報告されている方が良い組織になります。セクハラが隠蔽される組織で何が起こるかといえば、ラインを引き出すんですね。「どこからがアウトで、どこからがセーフなのか」というラインを。

 そうじゃなくて、根本的に何があかんかっていう話をしないといけない。人権は人間にもともと備わっている感情ではないので、アップデートが必要なんです。

――人権は、人間にもともと備わっている感情ではない?

谷口 私は、社会で生きていくライセンスが人権勉強だと思っています。運転免許だって更新制ですよね。40年前に免許を取っている人が、何も講習を受けずに走り続けられるわけではない。

 人権も同じように、社会が変わっていくし、人間が生きている数だけいろいろな事象があるので、アップデートしていかないといけない。外からの圧がない組織は気をつけないと風通しが悪くなります。

 それでいうと、マスコミもそうです、構造的には。今のグローバル企業が変わったのは外国人投資家が入ってきたからESG投資とか海外の基準は、と言い始めていますが、メディアは外圧がかかりづらい業界です(※)。
(※)インフラやメディア産業は外国人投資家の割合に制限がある。