新型コロナウイルスは旅行業界に多大な影響を与えているが、長期化するにつれて各国のウイルスへの対応や消費者の意識は変わってきている。欧米の旅行業界には明るく力強い変化の兆しを見ることもできる。本稿では2021年12月に開催された世界最大の富裕層旅行商談会に筆者が実際に参加し、現地で見聞きした様子から、世界の富裕層旅行のトレンドと日本市場の可能性について考えてみたい。(オータパブリケイションズ執行役員、元週刊ホテルレストラン編集長 岩本大輝)
マグマのように熱く煮えたぎる
世界の富裕層の旅行欲求
2021年12月6日~9日、フランス・カンヌにおいて「International Luxury Travel Market」(ILTM)が開催された。世界各国の富裕層旅行関係者が集まり商談を行うイベントであり、カンヌのほか、北米、南米、アジア太平洋地域で例年開催されている。
中でもカンヌで開催されるILTMは規模が最も大きく、19年開催時には1885社の出展企業(ホテルやウェルネス施設、クルーズやプライベートジェットなど、旅行コンテンツの提供者)と、1850社のバイヤー(富裕層のために旅程などをカスタマイズして提供する富裕層旅行エージェント)が参加し、7万を超える商談が行われた。
21年のILTMカンヌはコロナ禍の影響で規模を縮小したが、それでも1000社を超える出展企業と、ほぼ同数のバイヤーが参加をした。筆者はILTMのオフィシャルメディアとして取材に出向いたのだが、商談会の活気には本当に驚かされた。
夜には各出展企業がバイヤーやメディアを招待した交流会が開かれ、参加者は皆、積極的に情報交換に勤しんだ。
彼らとの会話を通じて感じたのは、非常に力強い「リベンジ・トラベル」のパワーだ。彼らの背景にいる富裕層は、旅行への欲求がまるで「マグマ」のように熱く煮えたぎっているのだという。
実際にマーケットは動き出している。例えばフランスのホテルマーケットは21年7月以降、需要が急回復し、11月には稼働率がおおむね70%~80%に回復したという。
あるいは、世界的なホテル業績リサーチ機関であるSTRによると、米フロリダ州マイアミでは、21年の客室あたり営業粗利益が19年比で14%上回ってもいる。
その他のエリアも感染再拡大などで需要の増減はあるものの、日本だけを見ていては分からない、旅行需要の力強い回復が世界のあちこちで見られる。
それでは、世界の富裕層は旅行に何を求めているのか。ILTMで数多くの関係者とコミュニケーションし、筆者が得た、世界の富裕層旅行のトレンドを紹介したい。