興味深いのは、ユーザーの日常生活との接点やギャップを強調することで、通常は学生に馴染みの薄い省庁に関する記事が、高いエンゲージメントを獲得したケースだ。映画『天気の子』の気象監修を務めた研究官の記事が話題となった気象庁、初の中途採用での異色人材採用についての記事が話題となった防衛省、そしてnoteでオープンに情報発信をしているデジタル庁などが注目された。

 若者の間で高まっている、社会貢献熱を反映したと思しきケースも。苦境に立たされている農業の生産者と消費者を直接繋ぐ産地直送サイト「食べチョク」を運営するビビッドガーデンは、その代表例だ。「小さな一歩」は前澤勇作氏が立ち上げた企業で、ひとり親が受け取れていない養育費を元パートナーに代わり、スマホによる手続きだけで即時支払うサービスを展開する。

 他にも、地域のまちづくりに関わるコンサルティングを行う「ここにある」、知的障がいを持つアーティストが描くアート作品をプロダクトにして社会に提案するヘラルボニーなど、社会貢献的な性格が強いスタートアップは数多い。

企業の情報発信は世の中の
ニーズにマッチしているか

 ここまで紹介したのは主にポジティブなエンゲージメントだが、就活生の親世代に人気のあった「古き良き大企業」に負けず劣らず、スタートアップを含めた「新進気鋭の企業」も注目を集めていることがうかがえるだろう。

 No Companyの秋山真・代表取締役社長は、「現在は働き方が多様化しており、学生たちも自己のキャリアを多角的に判断して就活に臨んでいる」と解説する。企業規模の大小や給料・福利厚生の良し悪しはもちろん重要だが、そればかりではない。学生たちは「自分が目指すキャリアにマッチした会社か」「キャリアアップを実現できる風土があるか」といった、自己実現に関わるポイントをより重視しているように見える。

 こうした状況の中で企業の採用担当者は、「自社の情報発信と世の中で求められていることとの間にギャップが生じていないかどうか、日頃から気を付けるべき」(秋山社長)である。せっかく自社の素晴らしさを伝えるメッセージを出しても、その内容が今のSNSの温度感と合っていなければ、むしろネガティブなエンゲージメントに繋がってしまうリスクもあるからだ。

 就活生もその親も、「今の時代ならでは」の注目企業をしっかり研究し、広い視野をもって就活に臨むといいだろう。

(本記事は株式会社No Companyからの提供データを基に制作しています)