アベノミクスで最重要なのは財政政策
設立総会で語られた積極財政の意義とは

 同日開催された設立総会においても、冒頭、呼び掛け人を代表して、中村裕之農水副大臣が積極財政の意義に言及している。中村副大臣は、高橋是清が「納税によってのみ政府の活動を行えば、国際社会の経済競争に敗れて、日本の国が落伍していく」として、そうであってはいけないとの認識の下、財政赤字を容認して財政出動を行ったことを引用し、これまでのわが国政府が取ってきた政策について振り返り、その結果や有効性を分析し、そうしたことを踏まえて責任ある政策(積極財政)を推進していきたいと述べている。

 設立総会では、同議員連盟の設立が決定された他、安倍晋三元首相と、安倍政権の内閣官房参与や駐スイス大使を歴任した、明治学院大学客員教授の本田悦朗氏による講演も行われた。

 この講演の内容が、まさに同議連が目指す方向性の基盤の一つとなるものであり、積極財政がなぜ今日本に必要で、それが問題なく可能であるのかについて理解するための基礎となるものである。この講演という土台の上に、同議連の議論・検討が積み重ねられていくといっても過言ではないものであるので、少々長いが、2回に分けてその概要を以下に記載しておきたい。

 なお、同講演の題名は「アベノミクスは日本を救う」というものであった。アベノミクスというと、金融緩和と、成長戦略と称した規制緩和が注目されがちだ。前者は貨幣数量説に基づくもので、インフレ率を上昇させる効果はなかったと批判され、後者についてはむしろデフレを進めるもの、成長を阻害するものばかりが実施され、日本の弱体化につながったと、筆者も含め批判してきた。

 したがって、「日本を救う」などと聞くと、何をばかなと思ってしまう方もいるかもしれない。しかし、筆者に言わせれば、アベノミクスにおいて最も重要なのは財政政策であり、それが中途半端で、完全に実施されなかったことが、アベノミクスをしてその効果を発揮させ得なかった原因である(その微々たる効果も、成長戦略、もっとはっきり言えば構造改革によって打ち消されてしまったというところも多分にあると思われるが)。

アベノミクスは日本を救う?
積極財政の意義を講演から読み解く

 以下が講演の概要である。

 まず、アベノミクスの大目標はデフレからの脱却であったが、デフレは3年、4年と続くと、将来にわたっての物価の下落を予想するようになるとする。物価が下がるというのはお金の価値が上がるということなので、デフレ環境の下では下手に消費をするよりもお金をためるほうが正しいことになる。しかし、家計の消費行動などのミクロとして正しいことが、国の経済全体、つまりマクロを台無しにしてしまう。マクロ政策とミクロ政策に矛盾が生じてしまう。みんながお金をため始めると、マクロ経済は成長しない。だから、一刻も早くマクロとミクロの矛盾を解消しなければいけない。