この水産会社は2019年1月2日から2月10日までの間、約611トンの中国産アサリを熊本県産に偽装した。さらに、同期間に約2トンの福岡県産アサリも熊本県産に偽装している。仮に、1kg200円で仕入れた中国産アサリ611トンを600円で販売したとすると、差し引きで約2億4000万円のもうけとなる。

 農水省は、この水産会社に19年8月22日から21年11月24日まで立ち入り調査をしている。2年3カ月間にわたる調査をしたにもかかわらず、偽装と認定できた期間は約1カ月だけであり、しかも、これだけ大量の偽装をしているのに、注意処分しかできなかったのだ。

韓国産アナゴ2パックを
国産と偽った会社社長は逮捕

 この水産会社は、食品表示法違反と認定されているが、不正競争防止法違反には問われていない。ここが刑事事件として処罰できるかどうかの分かれ道になる。

 食品表示法も「原産地を偽装して販売した者に2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処す」ことができるが、表示違反だけで逮捕、起訴されることはまずない。

 消費者庁が所管している食品表示法は、消費者に対して正しい表示をすることが目的なので、偽装したからといって、消費者がどの程度(金額)の被害を受けたのかを判別することが難しい。しかも、だまされた金額が少額なので、個々の消費者(被害者)にすると、大きな被害とはならない。

 一方、経済産業省が所管している不正競争防止法は、正直に商売している人および業界を守ることが目的なので、偽装の規模にかかわらず罰することができる法律なのだ。偽装した場合、個人は5年以下の懲役または500万円以下の罰金、法人は3億円以下の罰金と、食品表示法よりかなり重い罰則になっている。