13年に不正競争防止法違反で逮捕された水産会社社長の場合、逮捕理由は「韓国産アナゴを『焼アナゴ(国産朝焼き)』と偽って2パック計1160円販売した疑い」だった。

 同じように、16年に、中国産アナゴの加工品を国内産と偽って、社長等が逮捕された水産会社の場合は、「約886㎏を計300万円で不正に販売した」というものだった。

 一方、前述のアサリ偽装を行った水産会社の場合、偽装した量は600トン以上なのに、誰も逮捕されていない。同じ産地偽装といっても、罰則の適用には天と地ほどの違いがある。

 今回も、ワカメの偽装は不正競争防止法を適用したが、アサリの偽装にはなぜか不正競争防止法を適用していない。なぜなのだろうか。

 あくまで筆者の推測の域を出ないが、アサリの偽装の場合は「証拠が不十分なので刑事事件として裁判で勝てない」と判断したのか、もしくは、偽装したのは水産会社1社だけではない可能性が高く「すべての会社を調べて立件すると業界や地元に与える影響が大きいことを懸念した」からではないだろうか。

アサリ偽装を許した
行政の責任

 アサリ偽装疑惑では、熊本県の驚くべき対応も明らかになった。「県が毎年作成している水産統計にも、漁獲量を大きく上回る県産アサリの市場流通が記録されており、偽装の疑いが長年見過ごされてきた可能性がある」(2月12日配信・熊本日日新聞)、「統計に残されていた状況証拠、熊本県は『データを見落としていた』」(2月17日配信・西日本新聞)というのだ。

 熊本県が毎年作成している水産に関わる統計などをまとめた資料「熊本県の水産」には、熊本県産のアサリの漁獲量と大阪府内の中央卸売市場の取扱量が記載されている。