エディオンの願いは、最後までベスト電器には届かなかった。
家電量販店7位で、郊外型店舗を中心に九州でシェア上位のベスト電器が、都市型店舗を展開する5位のビックカメラの持ち分法適用会社となる。ビックカメラはベスト電器の出資比率を15.03%まで引き上げる予定だ。
同社は2007年10月の資本業務提携を手始めに段階的に出資比率を引き上げ、関係を強化してきた。これまでも提携効果を追求してきたが、さらに加速させるため持ち分法適用会社化に両社は踏み込んだ。新井隆二・ビックカメラ会長と有薗憲一・ベスト電器会長が相互に顧問に就任する。
現時点で業界2位のエディオンは、傘下のデオデオが08年1月にベスト電器株を3%取得するなど、ベスト電器に対して秋波を送り続けてきた。
最近ではベスト電器をなんとか振り向かせようと、最大手のヤマダ電機が保有する約8%のベスト電器株を買い取ろうと、ヤマダ電機側に打診していたほどだった。ベスト電器の嫁ぎ先がビックカメラに決まり、エディオンは振られた格好だ。
ベスト電器が注目されるのは、九州での圧倒的なブランド力と認知度、博多の一等地に大型店を構えるなど魅力的な店舗網を持っている点だ。
現在、ヤマダ電機は純投資を理由にベスト電器株を保有しているが、真の狙いは資本業務提携を見据えてのものだった。
成熟市場で成長は期待できず、パイの奪い合いのなか、ベスト電器を取り込めば一気に九州での覇権が握れる。だからこそ、同社をめぐって上位3社が綱引きをしていた。
だが今回の提携でその均衡は崩れ、売上高9948億円のビック・ベスト連合が誕生する。売上高2兆円が視界に入っているヤマダ電機は静観しているが、エディオンはそうもいっていられない。同社の今期業績予想は売上高8800億円で、業界2位の座を明け渡すことになる。
同社の今期第1四半期の既存店売上高は4.6%減で赤字に終わり、前年同期よりも収益は悪化している。
加えて、グループ会社の体制整備などが影響し、規模拡大を急ぐ競合他社と比較して業績のもたつきが目立つ。バイイングパワー(販売力)の維持は生き残りの最低条件で、順位の後退は死活問題といえる。
ビック・ベスト連合誕生で、エディオンにとって今期は生き残りを賭けた試練の年となりそうだ。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 片田江康男 )