アパレルから始めたニードルパンチ技法を産廃処理や下水道工事などの異業種に転用

――御社の事業内容にある「ニードルパンチ技法」とは何でしょうか?

田中 不織布の製造技法の一つです。針に縫い糸がなくても、生地と生地、あるいは生地と毛糸を接合できるという特徴があります。

――なぜ縫わずに接合できるのですか?

田中 通常の縫い針の断面は丸くなっていますが、ニードルパンチ専用針の断面は三角形で、それぞれ3辺の角にはバーブという特殊なギザギザの突起があります。その専用針を生地に、刺したり、抜いたりと上下運動させると、繊維同士を絡み合わせて一体化させることができます。そのため、接合が強いのです。

 ニードルパンチは手芸の刺しゅうでも使われていますが、弊社のニードルパンチ技法は原理だけ同じで、後は全く異なります。手芸では1本の針で接合するのに対し、弊社が開発・設計した機械は数十本から数百本をまとめて上下運動させることができ、そのため産業用の大きな生地を大量に接合することが可能です。

アパレルから始めたニードルパンチ技法を産廃処理や下水道工事などの異業種に転用代表取締役・田中茂樹氏。1965年生まれ。88年にシンガー日鋼に入社。縫製技術研究部を経て、93年、海外営業部ヨーロッパ中近東アフリカ課へ異動。オランダ駐在として4年間研修。96年に円満退社した後、現在の会社を設立。

――具体的にどういう用途で使われているのですか?

田中 一つは、産業廃棄物(産廃)の埋め立て処分場で使う不織布シートの加工です。産廃を埋め立てるときは、有害物質が漏れ出ないように、不織布で作られた防水シートを敷き、そこに産廃を置きます。シートは長さが100m以上あるため、複数のシートをつなぐ必要がありますが、つなぎ目の部分に隙間があると、有害物質が漏れ出てしまいます。

 従来はガスバーナーでシートとシートの表面を溶かして接合していましたが、この方法だと表面しか接合できないので接合が弱く、火事の心配もありました。そこで弊社のニードルパンチ技法でシートとシートをつなぎ合わせるようにしたのです。表面だけでなく内部まで接合しているので有害物質が漏れ出ません。