仮想通貨への影響

 今回のロシアのウクライナ侵攻を受け、大きな影響がありそうなのが仮想通貨だ。ロシア軍のウクライナ侵攻が報じられた2月24日には、ビットコインをはじめ複数の仮想通貨が軒並み下落している。

ロシア侵攻の裏で激化するサイバー戦争事情、トヨタ全工場停止・仮想通貨にも影響…ロシアがウクライナへ軍事侵攻した2月24日、ビットコインが急落した。
ロシア侵攻の裏で激化するサイバー戦争事情、トヨタ全工場停止・仮想通貨にも影響…ビットコイン以外にもさまざまな仮想通貨がある。2月末時点での「仮想通貨/日本円」チャート

 仮想通貨は匿名で取引されるブロックチェーン(分散型台帳)を用いており、従来の銀行システムとは異なる。そのため、SWIFTからの排除によりロシア国内の銀行から国際送金ができなくなっても、仮想通貨を用いることでロシア国外に資産を持ち出すことも持ち込むこともできる。つまり、経済制裁中であっても仮想通貨を用いて他国と取引をすることができれば、ロシアは実質上、経済制裁を回避することができるのだ。

 ロシアがウクライナ侵攻に当たり、経済制裁を受けることを予期していなかったとは考えにくい。仮想通貨は経済制裁の影響を受けにくく、ロシアがこれに目をつけて事前に経済制裁への対策として仮想通貨を利用していたことが考えられる。

 もしロシアが既に国内の資産をビットコインに変換していた場合、経済制裁をかわすことができる。しかし、ロシアがビットコインで取引を行えば、世界がそれを黙って見逃しはしないだろう。もし経済制裁がビットコインにまで及べば、最悪の場合、ビットコインが無価値なものになる可能性もある。

 仮想通貨は個人投資家も注目する投資手段の一つである。仮想通貨の中でもビットコインは先発のものであり、最も普及している。そのビットコインが無価値なものになれば、個人投資家への影響は計り知れない。また、天然ガスや小麦、半導体の原材料となるニッケルなどはロシアが高い輸出率を誇る。経済制裁への報復としてこれらのロシアからの供給が途絶える可能性があり、世界の経済への影響も懸念される。今後、ウクライナ情勢の変化によってはリーマンショック以来の世界金融危機につながりかねない。