ロシアによるウクライナ侵攻を受け、米国や欧州は追加の金融制裁を行うことを決めた。柱となるのは、ロシアの大手銀行を国際決済網のSWIFT(スイフト)から排除し、海外との貿易決済を難しくする制裁だ。特集『混迷ウクライナ』の#1では、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストが、「最終兵器」とも呼ばれるSWIFT制裁の実際のインパクトを、日本のビジネスパーソン向けに解説した。(聞き手・構成/ダイヤモンド編集部 杉本りうこ)
ロシアへのSWIFT制裁は
「最終兵器」になるのか?
米国と欧州連合(EU)などは2月26日、ロシアの特定の銀行をSWIFT(スイフト、国際銀行間通信協会)から排除する方針を示した。
SWIFTは世界中の金融機関が参加する国際決済インフラであり、排除されると国際送金が難しくなる。正確に言うと、SWIFTから銀行が排除されても、送金がすべて止まるわけでは必ずしもなく、テレックスなどを使って送金情報をやり取りすることは可能だ。
また、SWIFT以外の国際決済システムを使うことも可能で、例えば中国のCIPS(人民元国際決済システム)などがある。いわゆる法定通貨ではなく、金や仮想通貨で決済するという選択肢もある。
ただセキュリティ面や手間、コスト、実用性などを考慮すれば、SWIFTから排除される痛手はやはり大きく、ロシアの貿易活動に甚大な影響を与える。
さはさりながら、今回のSWIFTを使ったロシア制裁が、広く報道されているような「最終兵器」と呼べるほどの破壊力を持つのかというと、そこには注意が必要だ。国際貿易に関わる日本企業関係者や金融市場の関係者が知っておくべき、SWIFT制裁を理解する上でのポイントを次ページで指摘する。