「このところ、戦狼外交という言葉がよく聞かれるようになりましたが、挑発的な言動をする外交官と同じように、西側による中国への批判に対して、非常に強い表現で反論する公務員もいます。

 具体的にどのニュースについて、どのような議論をしたのかについては、ちょっとお話しできませんが、公務員の友人からは『もう昔の中国とは違うんだ。海外から言われっぱなしではなく、反論すべきことはしっかり反論しなければいけない』とか、『中国人として、われわれと違う価値観には堂々と立ち向かうべきだ』といった強い意見があります。

 でも、大企業の社員や企業経営者は、海外との関係が悪化すると困りますし、海外から中国がどういう目で見られているかも知っています。中国企業が海外とビジネスをする上でのマイナス面も懸念して、『おいおい、俺たちの立場もちょっと考えて、あまり過激なことは言わないでくれよ』といった姿勢です。

 習氏については名前を出さず、『彼は…』とか『あの人は…』などと呼んだりしますね。話の流れで皆わかるので……。同級生の会話を見ている限り、私たちの年代でも、だいぶナショナリズムが高まってきているなぁ、と感じます。

 特に海外との接点がない人たちからは、それを感じますね。海外との接点があるかないかは、中国人の考え方や視野に大きな影響を与えています。ずっと国内にいると、中国メディア(特にアメリカに対するネガティブな報道)の影響を受けやすいので、『中国はアメリカなど西側からいじめられている』という被害者意識が強くなるのです」

 この男性はグループ内の議論にはあまり参加せず、一歩引いた立場で同級生のやりとりを観察しているというが、私は彼の話から、意外にもSNS内ではオープンな政治談議が繰り広げられていることを知り、少し驚いた。

 日本では「言論の自由がない」というイメージが強い中国だが、彼が言うように、SNSで政治について語ることは、中国では一般的なことなのだろうか?

SNSにアップした写真が
詮索されるリスクを懸念

 50代で、別の名門大学を卒業した男性にも話を聞いてみた。彼も大学時代の同級生のグループに入っているが、政治的な議論はほとんどすることがなく、むしろ、敏感な話題はできるだけ避けていると話す。

「卒業した学科や年代によって、また、その人たちのバックグラウンドによって、SNSで議論する話題はかなり違いますし、バラバラだと思いますよ。皆が皆、政治に関心があるわけではないし。たとえ関心があっても、自分の意見を親しくない友人も含まれるグループチャット内で正直に話すか、というと別問題です。

 私のグループの場合は、無難な話題が多いですね。例えば、今度、同級生のAさんが深センに行くから、深センに住んでいるメンバーだけで集まろうよ、とか。そんな程度の会話です。

 今の政治に関して議論すると、仲間割れになったり、激しい口論になって気まずくなったりしますから。それにSNSに書くと、誰かがその会話部分をスクリーンショットに撮ったりして、口外するかもしれないという恐れもあります」