指揮があって、それを支えるのが統御と管理なのだという。指揮は一般的にイメージができるが、管理と統御とは一体どういったものなのか。

「管理は活動に必要な規則や制度、組織などを整えることです。部下が動きやすいように環境を良くしてあげるという意味ですね。これも指揮と同じく、一般の方でもイメージできるかと思います。一方、統御は簡単に言えば部下を感化させること、良い方向に導くことです。それによって部下や組織全体の能力を最大限に発揮させるというものが統御になります」

 モチベーションを上げるというイメージに近いが、単に部下を鼓舞するだけが統御ではないという。

「例えば、自分が上司だからといって現場に赴かないのではなく、積極的に現場に出て、現場の本当の状況や部下の仕事を掌握する。そういったことにより、『この上司は非常に我々のことをよく見ている』と部下が思うようになり、積極的に仕事に取り組むように導くことが統御です」

 陸上自衛隊には「指揮の要訣」という教えがある。具体的には次のようなことが書かれている。

「指揮下部隊を確実に掌握し、明確な企図の下に適時適切な命令を与えてその行動を律し、もって指揮下部隊をしてその任務達成に邁進させるにある。この際、指揮下部隊に対する統制を必要最低限にし、自主裁量の余地を与えることに留意しなければならない。指揮下部隊の掌握を確実にするため、良好な統御、確実な現況の把握及び実行の監督は特に重要である」

 わび氏は「幹部自衛官はこれを暗記しています」と話し、上記の一節をそらんじて続けた。

「指揮の要訣を解説すると、まずは確実に自分の部下の状況をしっかりと理解し、自分が何をしたいかという明確な意思表示が必要。そしてタイミング良く命令することが基本です。とはいうものの、あまり縛りすぎると、状況の変化に対応できないし、積極性もなくなってしまうので、加減が大切です。指揮下部隊の掌握を確実にするためには前述のような統御を行い、最後に確実に実行されているかどうかの確認も欠かせません」