医薬品写真はイメージです Photo:PIXTA

ロシアによるウクライナへの侵攻は、世界経済にさまざまな影響を及ぼしている。本稿を執筆している3月7日時点で、株価は激しく上下を繰り返しているし、原油は過去最高額で取引されている。こうした状況は、日本の製薬業界や医療にどのような影響を及ぼすだろうか。(医療コンサルサント 武知志英)

原油高が医薬品に影響?
日本の製薬業界はどうなる!?

 ロシアによるウクライナ侵攻が、世界の医薬品や日本の製薬業界に影響を与える懸念は、本稿を執筆している3月7日時点で、主に三つ考えられる。

1)日本がウクライナやロシアから輸入している医薬品はあるのか?あるなら、それらは継続して日本に供給されるのか?

2)米欧がロシア産原油・石油製品の輸入禁止を検討しているという。原油の世界供給が大幅に不足する可能性がある。これは世界の医薬品に影響を及ぼすのか?

3)日本の製薬業界や医療に影響はないか?あるなら、どんな影響がどれくらい出てくるのか?

 それぞれ考えてみたい。

 まず、日本がウクライナやロシアから輸入している医薬品について。

 結論から言えば、大きな支障は生じなさそうだ。製薬専門紙「日刊薬業」の2月25日付記事によれば、「ドラッグマスターファイル」(原薬の製造関連情報に関する材料、製造、加工、包装、保管、品質などのデータをあらかじめ審査当局に登録しておく制度)において、日本がウクライナから輸入しているのは1製品のみ。エピルビシン(製品名ファルモルビシン)という抗がん剤だ。これは申請と承認の手続きが必要だが、他国からも入手可能。また、日本がロシアから輸入している原薬は、同ファイルには存在しない。

 次に、ロシア産原油の供給量が低下すると、世界の医薬品にどんな影響を及ぼすのか。これは率直に言って、非常に大きな影響が出かねないと懸念している。その理由と、日本の製薬業界や医療に与える影響について、次ページ以降で詳しく解説する。