本業消失#2Photo:John S Lander/gettyimages

造船を祖業とする名門3重工をダブルパンチが襲っている。コロナ禍と脱炭素シフトにより、本業である航空機事業とエネルギー事業が消失の危機にあるのだ。特集『三菱重工・IHI・川重 本業消失』(全5回)の#2では、財務の視点から、二大ビジネスの衝撃度を明らかにしつつ、3重工が挑む本業脱却の本気度を検証した。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

名門3重工が未曽有の危機
世界的な移動制限と脱炭素が逆風

 三菱重工業が約6割、IHIが約6割、川崎重工業が約5割――。

 この数字は新型コロナウイルス感染拡大前の2020年3月期決算で、名門3重工の「本業」が稼いだ売上高が連結売上高に占める構成比である。本業依存度ともいえるものだ。

 本業とは、航空機事業とエネルギー事業の二大ビジネスのことをいう。三菱重工では「航空・防衛・宇宙」「エナジー」セグメント、IHIでは「航空・宇宙・防衛」「資源・エネルギー・環境」セグメント、川崎重工では「航空宇宙システム」「エネルギー・環境プラント」セグメントの売上高を合算して導き出したものだ。

 3重工はいずれも造船業を祖業とし、創業から百数十年をかけて多角化を遂げてきた。その造船事業は中韓勢のコスト競争力に太刀打ちできずに敗れ去り、航空機やエネルギーに続く多角化事業の芽が育っているとはいい難い。

 結果的に、3重工は二大ビジネスに連結売上高の半分以上を依存する財務構造になっている。

 ところが今、コロナ禍と世界的な脱炭素シフトのあおりを受け、3重工に“本業消失”の危機が迫っている。

 コロナの終息が見えない中、世界の移動制限はしばらく続く見通し。米国など一部では復活の兆しはあるものの、航空機関連産業は壊滅的な打撃を受けている。また脱炭素シフトは、火力発電所向けのガスタービンなど、化石燃料関連ビジネスの縮小をもたらす。

 航空機とエネルギー。本業消失という未曽有の危機に瀕している3重工は、いかにしてこの窮地から脱却しようとしているのか。