ヒトラーが好み日本ではタブー視されてきた「地政学」とは【週末に学び直し】Photo:123RF

ロシアのウクライナ侵攻で、改めて注目されている「地政学」。実は、ヒトラーが愛した学問で、日本では戦後GHQに禁じられたこともあり長くタブー視されてきた。「世界史」の劇変期にある今こそ、冷徹なリアリズムが支配する地政学の文脈から、日本の航路を読み解くことが急務だ。

「週刊ダイヤモンド」2017年1月28日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

 地政学は、アドルフ・ヒトラーが愛した学問だった。ナチス・ドイツは地政学を徹底研究したことで、新興のランドパワー国家(大陸国家)として欧州覇権を握る目前まで迫った。当時、アジア最大のシーパワー国家(海洋国家)だった日本も、ドイツ地政学を取り入れていた。

 しかし戦後、GHQに地政学を禁じられたこともあり、米ソといった戦勝国がこの禁断の学問の研究を続けた一方で、日本では長くタブー視されてきた歴史がある。

 時代は変わった。世界では野心をむき出しにした中国やロシアの強権的独裁者が跋扈し、欧州はEU(欧州連合)瓦解のふちにある。頼みの米国は孤立主義の道を歩み始めた。

 主要国が指導力を失った「Gゼロ」が加速し、「世界史」の劇変期にある今こそ、冷徹なリアリズムが支配する地政学の文脈から日本の航路を読み解くことが急務だ。

 地政学的に言えば、日本は当然、シーパワー国家と位置付けられる。海洋国家の生き方として参考になるのが、昨年EUとの決別を決めた英国の処世術だ。