いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた伊藤潤一氏。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。
平均保有期間が6カ月の理由を答えられるか
株式投資をしていると、パフォーマンスが上がらないことはあるものです。
そのような場面では外部環境の変化や業績の読み誤りなどに原因を求めがちですが、果たしてそれだけでよいのでしょうか?
世の中の事象はすべて「表」と「裏」があります。
パフォーマンス低下の原因として「外部環境の変化」「業績の読み誤り」が「表」とすれば、そこだけを見るのではなく「裏」についても考えなくてはなりません。
ここでの「裏」とは、自分自身のことです。
たとえばプロの運用の世界では、ファンドマネジャーが「1銘柄の平均保有期間はどのくらいですか」と確認されることがよくあります。
そこで「6カ月です」と答えると、当然「なぜ6カ月なのですか?」と聞かれます。
おそらくここで多くのファンドマネジャーは「2四半期くらい様子を見たいので」などと答えるでしょう。
しかし、これは答えになっているのでしょうか。
聞くほうも答えるほうも、ここで思考を止めてよいと思いますか?
私がヘッジファンドの運用者として仕事をしてきた経験では、「なぜ6カ月なのですか?」という質問のその先は尋ねられたことがありません。
しかし実は、私はその先の質問こそ大事な「裏」だと思っています。
1銘柄の平均保有期間が6カ月だとして、それはあくまで「平均」ですから、どの銘柄も保有期間6カ月で売買しているわけではありません。
保有期間が3カ月未満のこともあれば、9カ月以上ということもあります。
そうである以上、平均保有期間が6カ月である理由は、「それが最もパフォーマンスが高いから」であるべきです。
ですから運用者にお金を託す人が確認すべきなのは、「過去の実績を検証すると、保有期間が6カ月前後の銘柄のパフォーマンスは、全体の超過収益に対してどの程度の寄与があったのですか?」ということです。
そして、もし検証して「実は保有期間3カ月前後のほうが寄与度は高い」ということになれば、お金を託す人は「それなら平均保有期間3カ月で運用してほしい」と言うべきなのです。
これが「表」だけでなく「裏」も考えるということです。
パフォーマンスが落ちたときにも、「外部環境が悪化したから」「業績の読みを間違えたから」といった「表」の原因ばかり検証するのではなく、「パフォーマンスが何によってもたらされているのか」自分自身についての検証が必要です。
(本原稿は、伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義 超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」』から一部抜粋・改変したものです)