企業は根本からサプライチェーンを
組み立て直す必要がある

 ウクライナ問題の深刻化によって、世界全体で供給のボトルネックが深刻化し始めた。米欧によるロシア中央銀行への制裁や、ロシア主要銀行が国際的な資金決済システムから排除されたことなどによって、主要先進国企業とロシア企業のビジネスが困難になっている。

 欧米の大手エネルギー企業は、ロシア企業との石油や天然ガスの合弁事業から相次いで撤退している。金融制裁による資金決済のリスク上昇や、陸海空の物流サービスの混乱も深刻化している。世界的な供給減少への懸念から、原油や天然ガスなどのエネルギー資源や希少金属などの価格が高騰している。

 ユーロ圏の経済には、その影響が顕著に表れている。その一つが、自動車の生産だ。日本企業を含め自動車部品などの生産が止まり、その結果、フォルクスワーゲンなど欧州の主要自動車メーカーの生産が停滞し始めている。

 戦闘による社会インフラや生産設備の破壊、交通の要衝における地雷の設置などの影響を考えると、自動車などの生産停滞は長期化する恐れがある。今後もロシアがウクライナに対する強硬姿勢を崩さないのであれば、事態は深刻さを増すだろう。世界全体で供給のボトルネックは一段と深刻化し、需要を満たすことは難しくなるだろう。

 中長期で考えると、各国企業は根本からサプライチェーンを見直し、組み立て直す必要がある。天然ガスや、自動車の排気ガス浄化などに使われる希少金属のパラジウム、穀物などの調達を、ロシア以外の国へ切り替える企業が増えるだろう。

 ただし、それは一朝一夕には進まない。各国企業がモノやサービスを「ジャスト・イン・タイム」で供給することは難しくなるだろう。