資源や食料を輸入に頼る日本
GDP成長率は大きく低下する恐れ

 1990年代以降、世界経済のグローバル化が加速し、東欧ではポーランドなどの社会主義国が体制転換を進め、市場経済に仲間入りした。中国は安価な労働力を強みに「世界の工場」の地位を確立し、高い経済成長を実現した。

 グローバル化の推進によって、世界全体で経済運営の効率は向上し、企業の生産性も高まった。世界の消費者は、好きな時に、欲しいモノやサービスを、より安価に入手できるようになった。コロナショックが発生するまで、世界的に物価は上昇しづらく、インフレ率が2%に届かない国が多かった。

 しかし、ウクライナ侵攻によって、エネルギー資源や希少金属などの供給国ロシアが切り離され、グローバル経済から孤立する。米国はロシア産の原油の禁輸を発表した。英国も原油の輸入を段階的に削減する。

 他方で、ロシアは「ノルドストリーム1」(ガスのパイプライン)を経由した欧州への天然ガス供給を遮断する方針だ。ロシアにエネルギー資源を依存するリスクを軽減するために、米国や中東、南米から原油や天然ガスを調達する国は増えるだろう。ロシアと自由資本主義諸国の分断は深まるはずだ。

 供給がより強く制約されることで、世界全体でモノの値段は上がりやすくなる。特に、エネルギー資源や希少金属などは、かなりの上昇圧力がかかるだろう。

 サプライチェーンの再編も伴い企業のコストは増加する一方、収益は減少する。世界経済のブロック化によって景気減速に陥る国は増えるだろう。特に、わが国のように資源や食料を輸入に頼る国のGDP(国内総生産)成長率は、大きく低下する恐れがある。