世界は「大いなる安定」の時代から
低成長とインフレが進む時代へ

 短期間でウクライナ危機が落ち着くとは思えない。プーチン大統領の発言などをもとに考えると、事態が一段と緊迫する可能性は否定できない。

 世界経済はグローバル化の推進によって、緩やかな成長と低物価環境が併存した、「大いなる安定」の時代から、低成長とインフレが進む時代に足を踏み入れつつある。

 こうなると、主要国の中央銀行は緩和的な金融政策を継続できなくなる。米連邦準備制度理事会(FRB)は早急に金融政策の正常化、さらには引き締めに動くだろう。欧州中央銀行など、これまでは金融政策の正常化に慎重な姿勢を示してきた中央銀行も、急速に政策スタンスの転向を余儀なくされるはずだ。

 今後、物価上昇が鮮明になれば、景気が減速しても、金融政策にできることは限られる。中央銀行は物価上昇率の低下と、通貨の価値を安定させるために、政策金利の引き上げを優先せざるを得なくなるだろう。

 金利が上昇すれば、企業の資金繰りは悪化し、コスト増が業績を圧迫する。中小企業など相対的に経営体力が弱い企業を中心に、経営者は雇用を減らさざるを得なくなる。所得・雇用環境の悪化によって内需に下押し圧力が加わり、社会と経済の全体で閉塞感が高まりやすくなる。

 世界でそうした状況に直面する国が増える恐れがある。ロシアのウクライナ侵攻の展開によっては、物価上昇と同時に、景気が後退するスタグフレーションに追い込まれる国が増えそうだ。