また、2018年3月までに、品質データを取り扱う社員や管理監督者など1万人弱を対象に一斉アンケート調査を行い、法令違反や製品の安全性に影響がある案件はなかったという結果を得ている。

 だが前述の通り、THCの不正調査、再発防止策の実施が行われたまさに同時期に、ULの不正は「火消し」が敢行されていた。

 一斉アンケート調査は19年にも行われたが、ULの不正は上がってこなかった。コンプライアンス教育や品質向上プロジェクトはどこ吹く風、2度のアンケートもすり抜け、昨年末まで、不正行為が続いた。

 再発防止策についてさらに言えば、東レは2018年に品質保証本部を新設し、東レグループ全体の品質保証業務を集約させている。しかし、ULのフォローアップ試験は、樹脂ケミカル事業部の品質保証課を通して行われていた。

 東レの生産拠点は、ULの抜き打ち検査を受けると、東レの担当部門の品質保証課に連絡している。同課は、東レの余剰人員の受け皿会社である「殖産会社」にサンプルの成形を依頼し、この殖産会社が、難燃剤を混ぜるなどして偽サンプル作りを担っていた。

 なんのことはない、鳴り物入りで創設された品質保証本部の足元ですら、不正が横行していたのである。

無効の再発防止策に太鼓判を押した
弁護士らがUL不正を調査

 さらなる問題は、無効と言わざるを得ない再発防止策を褒めそやしていた面々が、ULの不正の調査・原因究明を任されていることである。

 東レは、ULの不正のリリースで、「有識者調査委員会」の具体的なメンバーを明らかにしていないが、その構成員は、藤田昇三弁護士(藤田昇三法律事務所)、松尾眞弁護士(桃尾・松尾・難波法律事務所)、永井敏雄弁護士(卓照綜合法律事務所)である。

 この3人は、THCの調査委員会と全く同じ面々である。