自動車や工作機械、半導体部材…
中国の減速は、わが国経済への逆風
今後の展開によっては、三重苦の深刻化とウクライナ危機の長期化によって、中国経済の減速傾向が想定以上に鮮明化するだろう。それは世界経済の足を引っ張る。
特に、負の影響が懸念されるのが、「灰色のサイ」と呼ばれる債務問題だ。不動産デベロッパーの資産の切り売りで、資産価格の下落圧力は強まり、不動産セクターを中心に中国全体で信用リスクは上昇するだろう。
米国の金融政策の転換によって世界的に金利が上昇すれば、債務問題は深刻化する。不動産や株価下落による負の資産効果によって、個人の消費意欲は弱まり、節約志向が強まる。土地利用権の売却益や税収の減少によって財政状態が悪化し、財政破綻に陥る地方政府は増える恐れがある。
今後、経済成長率が低下し、それが信用リスクを押し上げ、一段と景気減速が懸念されるという負の連鎖が考えられる。となると、自動車や高級ブランド、アパレル、飲料や食品など、中国の需要獲得を目指してきた各国企業の業績は悪化するだろう。それは、所得と雇用環境を不安定化させる要因にもなる。
中でも、わが国経済への逆風は強まるだろう。コロナ禍の日本経済はハイブリッド車(HV)や精密な工作機械、高純度の半導体部材など、中国の需要を取り込んで景気の持ち直しを実現してきた。
しかし、今後はそうした需要が増加基調で推移するとは考えづらい。自動車分野では、産業補助金に後押しされて中国の電気自動車(EV)メーカーが急速に価格競争力をつけている。
また、中国でのコロナ感染再拡大によって、わが国へのインバウンド需要も蒸発した状況が続くだろう。ゼロ・コロナ対策の徹底や人件費の上昇によって、中国から他のアジア新興国に生産拠点を移さざるを得ない本邦企業も増えそうだ。
中国経済が高成長から安定成長への曲がり角に入ったことは、わが国経済にとって大きなマイナスである。