できるだけ多くの選択肢をつくり出す

別の会社で、実際に副業をしている人の話を聞いたことがあります。

その人は「副業を会社に許可されているからこそ、会社の仕事をしっかりやる責任をより強く感じる」と言っていました。また、副業を始めてからは副業の経験を活かしたプロジェクトを実現させるなど、会社の業務にも好影響があるといいます。

2つの仕事をこなしてさまざまな人とつながることで、思考や発想の広がり方が劇的に変わっているようです。

さらに、個人事業主として対価を得て仕事をすることで、会社から対価をもらう意味についても「ただ所属しているから給料をもらえるのではなく、業務の成果を介してもらえているのだ」と身にしみてわかるようになったと聞きました。

副業を許可していない会社は、「本業に割く時間が減る」というデメリットを重く見ているのかもしれません。しかし、副業する社員には「コミットメントが高くなる」「社外でスキルを身につけることで人材としての価値が高まる」などのメリットがあるばかりか、そのような人が組織の中にいることそのものが周囲に好影響を与えることも十分に考えられます。私には、副業の許可は会社にプラスの影響のほうが圧倒的に大きいと思えます。

なお、社外で副業させるのがどうしても難しければ、「社内副業」でも効果があるでしょう。

たとえば経理の仕事をしている人の中には、「営業の仕事を任せてもらえれば、営業部門の人たちよりよほど稼げる」と思っている人もいるかもしれません。会社側は、そういった人に営業の仕事を兼業させてみる枠組みを用意すべきだと思います。実際に営業の仕事をやってみたら、本当に高い営業成績をあげる可能性もあるのです。

適性というのは仕事の実践の中で開拓していくものであり、チャンスがなければ眠ったままということもあります。「社内副業」のような、個人が適性を開拓してスキルを身につけるチャンスを増やすことが、長く楽しく働ける人、そして会社にとって必要な人材を増やすためのポイントだと思います。

「人生100年時代」は長い戦いになります。そこで大事なのは、なるべく多くのオプション(選択肢)を自分でつくり出すことです。そのうえで、自分に合っているものはどれかを判断する必要があります。

人生の勝負は、たくさんのオプションをつくる「創造力」と、その中から最適なものを選ぶ「判断力」の掛け算で決まるといってもいいでしょう。

この掛け算において、先に立つのは「創造力」です。

「毎日忙しいから」「今の業務が大変だから」と言いながらオプションをつくり出すことを放棄している人は、人生の勝負で負けてしまう可能性を意識すべきでしょう。

(本原稿は、伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義 超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」』から一部抜粋・改変したものです)