海運バブル コロナ最高益の不安#3Photo:123RF

ロシア軍がウクライナの国境付近に集結。戦争前夜の様相を呈する今、商船三井はロシア北極圏でのLNG開発プロジェクトに深く食い込み、新たな砕氷タンカーの建造計画を発表するほど前のめりだ。特集『海運バブル “コロナ最高益”の不安』(全8回)の#3では、同社の乾坤一擲の賭けの成否を、トップの見解と共に検証する。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

ウクライナ情勢緊迫で日本も追加制裁は必至
ロシアに深く関わってきた商船三井の判断は?

 氷に閉ざされた「世界の果て」。ロシア北西部の北極圏にあるヤマル半島で2014年から、LNG(液化天然ガス)を採掘するプロジェクトが始まった。

「ヤマル」とは現地の先住民の言葉で「世界の果て」を意味する。冬の気温がマイナス50度に達するこの地からLNGを掘り出し、各国に輸出するという、気宇壮大な取り組みだ。

「緊張の緩和に向けた粘り強い外交努力を続けていきたい。G7(先進7カ国)をはじめとする国際社会と連携し、実際の状況に応じて適切に対応していきたい」――。岸田文雄首相は2月17日夜、ロシアのプーチン大統領と電話会談した後、記者団にこう話した。

 ロシアが国境周辺に軍隊を集結させ、戦争前夜の様相を呈するウクライナ。米国、欧州各国とさまざまな思惑が絡んだ駆け引きが繰り広げられている。もしロシアがウクライナに侵攻すれば、日本政府は米国などと連携して追加の経済制裁に加わる見通しだ。

 一方で、日本の海運大手の一角を占める商船三井は従来、ヤマルなどロシア北極圏でのLNGプロジェクトに深く関与してきた。地政学上の歴史的な危機にあって、商船三井はどのような判断を下すのか。社運を懸けた“大ばくち”に至った経緯とそのこれからを、商船三井のトップの見解と共に検証する。