身の回りで観察できる
宇宙が膨張している証拠

 自分が運動していると、観測される波の周波数が変化する。その周波数の変化のことをドップラーシフトという。モーターボートで沖合に向かうときには、海岸に押し寄せる波が次々にぶつかってくる。しかし海岸に戻るときには、波と同じ方向に進むので、たまにしか波頭に出くわさないように感じられる。

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 それと同じように、自分のほうに向かってくる救急車のサイレンの音は高く聞こえる。遠ざかっていくときには低く聞こえる。このように音の高さが変わるのは、耳に届く音波の周波数が変化するためだ。救急車が近づいているときには、耳に届く音波の間隔が狭くなるため、サイレンの音が高くなる。逆に遠ざかっているときには、耳に届く音波の周波数が低くなり、低い音になる。

 光の波に起こるドップラーシフトを観測すると、恒星や銀河が地球に近づいているか遠ざかっているかがわかる。聞くのではなく見るのだ。こちらに近づいている恒星の光の波は押し縮められて、わずかに青っぽく見える。宇宙の大部分の天体は逆に遠ざかっていて、赤っぽく見える。

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 遠くの銀河からの光は、スペクトルの赤色のほうにずれているように見える(「赤方偏移」という)。これは、この宇宙全体が膨張しているという説と合致する。

 夜空に見える多くの星の光は、何百万年も昔に恒星から出てきたものである。銀河や恒星はあまりにも遠いため、いくら光の速さが速いとはいえ、光が地球に届くまでに何百万年もかかる。ものすごく遠い恒星や銀河を観測すると、宇宙の初期にまで「時間をさかのぼる」ことができるのだ。

(本原稿は、『アメリカの中学生が学んでいる14歳からの科学』から一部を編集・抜粋したものです)