「あくまで私の臨床経験からの肌感覚ですが、眼精疲労に限らず、肉体的な疲労や睡眠不足などが引き金になるケースが多いです。なかには、サッカー・ワールドカップやオリンピックなど、世界的なスポーツイベントの深夜放送を連日観戦していたら眼瞼ミオキミアを発症した、という人もいます」

 眼瞼ミオキミアは多くの場合、数日間~数週間で自然に治癒するのが特徴だ。そのため「数週間で症状がおさまれば、医療機関を受診する必要はない」と平松氏は話す。

「現状、眼瞼ミオキミアの治療法や、適応がある薬は存在していません。医師の多くは眼瞼ミオキミアの患者さんに、疲れ目用のシアノコバラミンという目薬や、ビタミンB系の内服薬を処方して対応しています。また、エビデンスはありませんが『目を温めて血流を良くする』という対症療法もありますね。たとえば、入浴中に湯船でしぼったタオルをまぶたの上に乗せたり、ホットアイマスクを着けて眠ったり、などの方法で快方に向かうケースもあります」

 そのほか、まぶたが勝手に動いたら、手のひらを丸めてまぶたを覆う、という方法もある。手で覆うと神経系の疲労やストレスの緩和につながるという。

「何より大切なのは、十分な睡眠と目の休息です。デスクワーク中も、適宜モニターを見ない時間を作りましょう。また、仕事の忙しさなど、ストレスによっても引き起こされるので、眼瞼ミオキミアは体から発せられた休息のサインと捉えてください」

眼瞼ミオキミアと
似て非なる眼瞼痙攣

 この「眼瞼ミオキミア」は短期間で自然に治るが、もしも1カ月以上まぶたの状態が変わらない場合は、別の疾患を発症している可能性がある、と平松氏。その疾患の一つが「眼瞼痙攣(がんけんけいれん)」だ。

「眼瞼痙攣の症状は“両まぶた”が不規則に動くのが特徴です。過剰なストレスによる神経の興奮や、神経系の疾患、まれに脳の問題などが原因として考えられます。また、抗うつ剤などの神経に作用する薬の影響で発症するケースもありますが、痙攣が気になるからといって自己判断で薬の服用をやめるのはNG。主治医と相談のうえ、方針を決めてください」