1 安全保障の確保に関する経済施策を一体的に講ずるための政府としての基本方針を策定

2 特定重要物資の安定的な供給の確保に関する制度、特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度及び特定重要技術の開発支援や特許出願の非公開に関する制度を創設

 ここで、特定重要物資とは、国民生活に必要不可欠な物資や、国民生活や経済活動が依拠している重要な物資、さらにその生産に必要な原材料等について、外部に過度に依存していたり、そのおそれがあったりする場合に、安定供給の確保が特に必要なものとして政令で指定されるものである。現段階では具体的なものは示されていないが、例えば半導体や医療関係物資等が想定されている。

 特定社会基盤役務とは、「国民生活及び経済活動の基盤となる役務であって、その安定的な提供に支障が生じた場合に国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるもの」である。こちらは具体的な対象が法案50条第1項に列挙されており、それらをいくつか挙げれば、電気、水道、ガス、石油備蓄、鉄道、自動車貨物輸送、海上貨物輸送、航空運送、放送通信、金融などである。

 これらの役務を提供する事業者のうち、その設備が停止したり、機能低下したりした場合に、特定社会基盤役務の提供に支障を来し、国家・国民の安全を損なうおそれが大きいものとして主務省令で定める基準に該当する者が、特定社会基盤事業者として、主務大臣が指定する(主務省令とは当該特定社会基盤役務を所管する府省の命令のことであり、主務大臣とはその大臣である。要するにどれを指定するかは各府省において決められるということである)。

 そして本法案が創設する制度とは、前者については安定供給の確保を、後者については外部からの妨害などにより安定的な役務の提供に支障を来すことがないようにするものである。したがって、非常時も想定して、それが効果的に行うことができるような制度設計となっているか否かが重要なポイントとなる。

 総論としては、政府が国会に提出したこの経済安保法案は、非常時ではなく平時を前提にしたような内容となっており、とても「安全保障の確保」につながるようなものとはいえないだろう(もちろん、非常時を念頭に置いて平時から準備をしておくという趣旨なのだろうし、だからこそ「経済施策を一体的に講ずることによる」安全保障の確保なのであり、「確保の推進」なのであろう)。

 しかも、新型コロナに今度はウクライナ危機と、ことここに至ってやっと動きだしたわけであり、遅きに失したとしかいいようがない。無論、必要な法制であることに異論を挟む余地はない。したがって、審議を通じて必要な修正が施され、結果としてしっかりとした内容で整備されれば、その遅れも挽回されると考えたいところであるが、どうであろうか。以下、具体的な点を挙げながら見ていこう。