丸井グループの企業統治は市場から一定の評価を得ている。代表例は経営を監督する取締役の顔触れだ。投資家や産業医、SDGsの専門家といった多彩な肩書が並ぶ。しかし、祖業である小売りのたたき上げがおらず、“先進的”と銘打たれた統治体制の実効性に、社内外から懸念の声も上がる。特集『丸井 レッドカード』(全13回)の#6では、“異形のガバナンス”がはらむ二つの死角に迫る。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
産業医、投資家…多彩な顔触れの取締役
公的機関からもガバナンスで評価
「サステナビリティー課題に対するガバナンス体制が詳細に記載されており、サステナビリティー委員会、取締役会、担当の社外取締役の役割が明確」――。
3月15日、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、丸井グループ(G)が国内株式の運用機関から「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」として高評価を得たと発表した。
この調査は、GPIFが運用機関に対して選定を求めたもので、丸井Gは積水ハウスや東京海上ホールディングスと並び、市場の“お墨付き”を得た。特に、丸井Gはガバナンス体制に対する評価が際立った。
丸井Gは昨年6月の株主総会で新たに3人の専門家をボードメンバーに迎え入れた。その中の一人が、デンマーク出身のサステナビリティー経営の専門家である。
時を同じくして、投資家や産業医といった専門家も取締役に就いており、こうした企業統治改革の取り組みが、早速実を結んだといえる。
一見、先進的にも思える経営の監督体制だが、丸井G関係者からは懸念の声が上がる。その統治体制には二つの「死角」があるからだ。次ページからは、“異形のガバナンス”とその裏にある懸念材料について解説していく。