丸井レッドカード#12Photo:Diamond

丸井グループ(G)が、社員の職務発明に対し、報奨金を支給する内部規程を今年3月に新設していたことが分かった。ダイヤモンド編集部が入手した内部資料によると、報奨金は特許登録で5万円などと少額なもの。特集『丸井 レッドカード』(全13回)の#12では、急ごしらえの規程の具体的な中身に加え、規程が元役員との訴訟対策や、社員への“踏み絵”のように使われている実態も明らかにする。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

丸井Gが職務発明の報奨金を新設
元役員の提訴直前にひそかに導入

「係争中のため、規程に関しても事実関係を含め回答を控えたい」

 5月12日に開かれた丸井グループ(G)の2022年3月期決算会見。職務発明に関する内部規程の存在の有無を問われた総務部門を統括する石井友夫専務執行役員は、そう述べて言及を避けた。

 石井氏が「係争中」とした訴訟は、丸井G元常務執行役員の瀧元俊和氏が、エポスカードのビジネスモデル特許を巡る発明対価を古巣に求めたものだ。

 訴状などによると、瀧元氏はエポスカード社の社長だった13年にポイントに関する新たな仕組みを発明。その発明はエポスカード社に約600億円の利益をもたらすとして、発明対価の一部である1億円を支払うよう求めている。

 原告の瀧元氏が強調するのが、発明の対価を全く受け取っていないという点だ。

 ダイヤモンド編集部のインタビューに応じた瀧元氏は、「発明に関する報奨金を1円たりとも受け取っていない」と主張する。

 その上で、「社内には職務発明の対価を支払う規程自体が存在しなかった」と指摘する(本特集#9『丸井G元役員がエポスカードを巡り古巣を提訴した理由を独占告白「協議応じず“ゼロ解答”」』参照)。

 つまり、丸井Gの職務発明に関する社内規程の不備が、訴訟を招いたともいえる。

 丸井Gは冒頭の会見での発言のように、対外的には規程の内容はおろか、存在するかどうかについても固く口を閉ざしている。

 しかし、ダイヤモンド編集部が入手した内部資料によると、瀧元氏の提訴直前に、職務発明に関する規程が導入されたことが判明した。報奨金は特許登録でわずか5万円と定められている。

 次ページからは、規程の具体的な内容とともに、瀧元氏との争いを念頭に、急ごしらえで設けられた規程が社員に対する「踏み絵」のように使われている実態を明らかにする。