丸井グループの元常務執行役員が、エポスカードを巡るビジネスモデル特許の発明対価の支払いを古巣に求めた訴訟の第1回期日が5月24日、東京地方裁判所(杉浦正樹裁判長)で開かれた。元役員側は、特許が会社側に約600億円の利益をもたらしたなどとし、発明対価の一部として1億円を請求。会社側は答弁書を提出し、争う姿勢とみられる。特集『丸井 レッドカード』(全13回)の#11では、幕を開けた異例の法廷闘争の裏側をお届けする。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
丸井G元役員が古巣を訴えた異例の特許訴訟
発明対価の一部として1億円を請求
丸井グループ(G)の元役員が古巣に“レッドカード”を突き付けた法廷闘争がついに幕を開けた――。
丸井Gの元常務執行役員が、エポスカードを巡るビジネスモデル特許の発明対価の支払いを古巣に求めた訴訟の第1回期日が5月24日、東京地方裁判所(杉浦正樹裁判長)で開かれた。
原告は丸井Gの常務執行役員を2021年に退任した瀧元俊和氏だ。瀧元氏は04年に丸井Gのクレジットカード事業を行うエポスカード社(当時はマルイカード社)発足時に部長に就任し、12~16年にはエポスカード社の社長も務めるなどカード事業に長く携わった。
訴状などによれば、原告側が発明対価を求めたのは、エポスカードのサービス「選べるポイントアップショップ」に関する特許だ。エポスカードのゴールドカードなどを持つ会員が、自ら選んだ三つの店舗でカードを利用した場合、通常の3倍のポイントが付与されるというサービスで、14年に特許を出願した。
原告側は、この発明が特許期間の20年間で少なくとも約600億円の利益を会社側にもたらし、瀧元氏が受け取るべき発明対価の額は約90億円に上ると主張。裁判ではその一部に当たる1億円の支払いをエポスカード社に求めた。
瀧元氏は、第1回期日前に応じたダイヤモンド編集部のインタビューで、「莫大な利益を生み出しているにもかかわらず、発明に関する報奨金を1円たりとも受け取っていない」などと語っている(本特集#9『丸井G元役員がエポスカードを巡り古巣を提訴した理由を独占告白「協議応じず“ゼロ解答”」』)参照)。
一方、丸井G側は今回の訴訟について、ダイヤモンド編集部が独自入手した社内メールでは、対決姿勢を前面に押し出していたものの、これまで対外的にスタンスを明らかにしてこなかった。元役員による異例の訴訟に対して、法廷でどう主張していくのか。
次ページ以降で、第1回期日を終えた異例の訴訟について解説していく。