文在寅大統領は同日、緊急国家安全保障会議(NSC)を主催して「今回の発射が、金正恩国務委員長が国際社会に約束したICBM発射猶予を自ら破棄したものとして、朝鮮半島と地域、そして国際社会に重大な脅威をもたらし、国連安保理決議に明らかに違反した」と述べ、重大な懸念を表明した。

 文在寅大統領はこれまで、北朝鮮のミサイル発射による挑発に対し、遺憾の意は評しても、重大な懸念は表明してこなかった。北朝鮮を刺激することで、対話の機会を損ないたくないとの意向があったのだろう。

 国会の外交統一委員会緊急懸念報告で鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相は、野党「国民の力」議員からの「今回の北朝鮮のICBM発射は、非核化の意志がなく、核保有の意思をはっきりと国際社会に示すものではないか」との質問に対し、「そうした意図があるとみられる」と答弁した。

北朝鮮は4月下旬に
核実験が可能との見方も

 北朝鮮は18年5月の爆破によって閉鎖した咸鏡北道吉州豊渓里(プンゲリ)核実験場の復旧作業を急いでおり、早ければ4月下旬にも核実験が可能だと、軍および情報当局は判断している。豊渓里実験場には4つの主坑道があるが、そのうちの3番目を短期間に復旧しようとしている。

 国連安保理北朝鮮制裁委の専門家パネルは20年9月に出した報告書で、豊渓里の核実験場は「坑道の入り口だけが破壊されたとみられる」とし、入り口さえ再建すれば容易に復旧可能だとの見解を表明していた。

 また、北朝鮮は国際社会の関心を豊渓里に集中させ、他の場所で意表をついて核実験を行う可能性も指摘されている。

 北朝鮮は1月の朝鮮労働党中央委員会第8期第6回政治局会議で「われわれが先決的に、主導的に取った信頼構築措置を全面的に見直して、暫定中止していたすべての活動を再稼働する問題を、迅速に検討する」と明らかにしていた。それはICBMに次いで核実験再開も近いことを示唆しているのだろう。

追加制裁によって
北朝鮮の翻意を促すのは限界

 これまで韓国をはじめとする国際社会は北朝鮮の核ミサイル開発には、国連における制裁を強化するするとともに独自の追加制裁も行って北朝鮮に圧力をかけ、翻意を促すことを基本としてきた。

 17年に北朝鮮がICBM「火星15」を発射した際、国連安保理は制裁決議2397号を採択した。同決議には追加のICBMが発射された際には、原油の供給をさらに制限することがうたわれていた。しかし、中国はこれにも反対している。

 国連安保理は北朝鮮によるICBM発射に対する追加制裁について話し合う緊急の公開会合を招集した。これまで北朝鮮の弾道ミサイル発射に対する会合は非公開で行われており、公開会合は17年以来4年ぶりである。