前回は「イノベーションを起こせる組織」に見られる特徴として「リーダーシップスタイル」、「人材の多様性」、「上下間の風通しの良さ」について述べた。今回は「ネットワーク密度の高さ」、「失敗に寛容な文化」、「組織における遊びの存在」について述べてみたいと思う。

4.ネットワーク密度の高さ

 イノベーティブな企業に観察される特徴として、「社内外に広く濃いネットワークが形成されている」という点が指摘できる。平たく言えば、異なる部門や社外であっても、様々な情報交換が行われている、ということだ。

 しかし、なぜイノベーティブな企業では、広く濃いネットワークが形成されているケースが多いのだろうか?これはイノベーションの目利きに関連する問題である。イノベーションの目利きとはつまり、アイデアの萌芽を見せられた時、そのアイデアの持っている可能性をどれくらい正確に見抜けるかという「眼力」のことである。

 一般に、多くの管理職や経営者は「素晴らしいアイデアを見れば、誰だってすぐにその素晴らしさを理解できる」と考える傾向があるが、過去の歴史をひも解くかぎり「イノベーションの目利き」は、ほとんど不可能と言えるくらいに難しい、というのが真実である。

天才エジソンも大いに悩んだ

 例えば今日の音楽産業の礎となる蓄音器を発明したのはトーマスエジソンだが、エジソンは、蓄音器の用途を以下の様に想定していた。

①速記者を必要としないで手紙を書く、または口述筆記する
②目の不自由な人のための音の本にする
③話し方の教育に用いる
④音楽を録音、再生する
⑤家族の記録として、家庭の肉声や遺言を録音する
⑥オルゴールや玩具にする
⑦帰宅時間や食事時間を教える事が出来る
⑧発音を正確に録音するので保存出来る
⑨教師の講義を録音し、ノート代わりとして単語の記憶用として使う
⑩電話機を組み合わせ、通話を永久保存する