ちょっと偏っている人こそオリジナル案を出せる
――「熱」というテーマで本を書かれたのは、どのような理由があったのですか?
佐俣 とはいえ、逆に「優れたやり方」、真っ当なことばっかりやってもどうしようもないんですよね。
スタートアップは「負け筋のやつが勝ちに行く」のが基本なので。コアに情熱を抱えていないと、何も進まない。
その「熱」はモテたいとかでも別にいいんです。
世界平和のために歌を歌う人も、基本的には「モテたい」のような個人的欲求からスタートしている人が多いはずです。
ステージが上がっていくと、「世の中のために」「若い人のために」って思うのですが、スタートは別にモテたいでいいと思うんですよ。
うまく言語化できていなくても、「わけのわからない情熱」がスタートです。ステージが上がれば、基本的にみんな真っ当になってくるので。
だから僕が創業期に投資するとき「異常な情熱」が欲しいと思います。
一方で、「優れたやり方」が突出しすぎている人、つまり考えすぎている人は、起業には向いていないと思います。フラットに考えすぎてしまい、苦労してしまいますね。
――フラットだと、なぜ苦労するんですか?
佐俣 オリジナル案が出なくなってしまうからです。自分のエゴが出てこない人は、起業すると超苦労すると思います。
ちょっと偏っている人の方がいいですよね。世の中をフラットに見られる人間は、分析には向いていますが、イノベーションは偏りから生まれるので。
平尾丈(以下、平尾) 面白いですね。「自分らしさ」がないとモチベーションが湧かず、継続性がないと私も思っています。
それから、今は様々な企業が「パーパス」を設定していますが、「自分らしさ」を入れている会社も多いと思います。
でも「自分らしさを大切に」と言われ、仕事で実際に自分らしくやってみたら成果が出ない。
そこで悩んでいる人が「別のやり方」をトッピングとして入れると「別解」となり、成果が出るんです。
それがイノベーションと言える時代になったのかなと思います。
別解にたどり着く道のりは人それぞれ違っていて、そこに仕事の多様性が生まれるんですよね。
株式会社じげん代表取締役社長執行役員 CEO
1982年生まれ。2005年慶應義塾大学環境情報学部卒業。東京都中小企業振興公社主催、学生起業家選手権で優秀賞受賞。大学在学中に2社を創業し、1社を経営したまま、2005年リクルート入社。新人として参加した新規事業コンテストNew RINGで複数入賞。インターネットマーケティング局にて、New Value Creationを受賞。
2006年じげんの前身となる企業を設立し、23歳で取締役となる。25歳で代表取締役社長に就任、27歳でMBOを経て独立。2013年30歳で東証マザーズ上場、2018年には35歳で東証一部へ市場変更。創業以来、12期連続で増収増益を達成。2021年3月期の連結売上高は125億円、従業員数は700名を超える。
2011年孫正義後継者選定プログラム:ソフトバンクアカデミア外部1期生に抜擢。2011年より9年連続で「日本テクノロジーFast50」にランキング(国内最多)。2012年より8年連続で日本における「働きがいのある会社」(Great Place to Work Institute Japan)にランキング。2013年「EY Entrepreneur Of the Year 2013 Japan」チャレンジングスピリット部門大賞受賞。2014年AERA「日本を突破する100人」に選出。2018年より2年連続で「Forbes Asia's 200 Best Under A Billion」に選出。
単著として『起業家の思考法 「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法』が初の著書。
松本恭攝(以下、松本)みなさん、それぞれのやり方があるんですよね。
佐俣 10年くらい生き延びている会社には、オーナー社長の「クセ」がありますよね。