計画が楽観的すぎる
宇都宮ライトレール

 国内初の新設LRT(次世代型路面電車)となる宇都宮ライトレールは、2022年3月に開業を予定していたが、用地買収の遅れなどにより1年延期。今年度に持ち越しとなった。

 同社の発表によると現在、道路上を走行する併用軌道区間の中央分離帯の撤去や道路移設、立体交差区間の橋梁工事、線路敷設工事が進められており、これらは概ね2022年10月頃までには完了する予定だ。

 2019年に行った需要予測では平日1日当たり約1万6000人、うち約1万3000人が通勤・通学利用と推計しており、このうち7割が自家用車からの転換と見込んでいる。

 平日朝の宇都宮駅東口には、沿線のキヤノンやホンダの工場や研究所に向かう社員専用通勤バスが多数運行されている。また宇都宮郊外は完全な自動車文化圏で自動車通勤も多い。しかし、この中からどれほどの通勤者がLRTに移るのか。宇都宮は前述のように、これまで軌道交通が存在しなかった地域に新設されるだけに、その効果は見通せない。

 JR西日本の富山港線を全面的に改修し、2006年4月に国内初の本格的LRTとして開業した富山ライトレールの事例を見てみると、利用者の開業以前の利用交通手段は、JR富山港線が46.7%、バスが13.3%の中、自動車は11.5%に過ぎない(富山市調べ)。2019年度の定期利用比率は52%である。

 もちろん沿線企業の数や規模が異なる二つの路線を一概に比較はできない。だが、定期利用比率が8割以上で、そのうち7割が自動車からの転換という宇都宮ライトレールの見立ては楽観的すぎるように思える。