さらに建設費が想定より上振れした結果、事業の費用対効果を示す「費用便益比」は1を下回ることになった。つまり事業に要する「総費用」の多くを占める建設費が増大したことで、時間的な短縮や金銭負担の軽減など事業が生み出す「総便益」を上回ってしまうという計算だ。このままでは費用に見合わない失敗した公共事業ということになってしまう。

 とはいえ筆者は宇都宮ライトレールへの期待を諦めていない。新設LRTが成立することを示すことができれば、導入を検討する他の都市でも公共交通を中心としたまちづくりに踏み切るきっかけとなり得る。宇都宮ライトレールの成否は、今後の公共交通の在り方を決定づける大きな転機となるだろう。

東急の値上げに追随する
鉄道事業者が増える可能性

 最後に東急電鉄が今年1月7日に申請し、4月8日に認可された改定率12.9%の上限運賃改定だ。2023年3月から、初乗り運賃は126円(ICカード、以下同)から140円になり、渋谷~横浜間(24.2キロ)は272円から309円に値上げされる。

 東急の申請を受けて国土交通大臣は1月12日、運賃設定などを審議する諮問機関である運輸審議会に諮問していたが、審議会は4月5日、値上げ申請について「適当である」と答申した。

 2005年3月から消費税による運賃改定を除き17年間、現行運賃を維持してきた中で、コロナ禍で利用者が大幅に減少し、収益の悪化が著しい。また、行動様式の変容が一定程度定着し、需要の回復が見通せない一方で、安全の確保に必要な設備投資は引き続き実施する必要がある。こうしたことから、審議会は安全輸送と健全な経営を維持するため値上げはやむを得ないとしている。