その保険、本当に必要?
入るべき保険の見極め方

(1)各種の保険制度

 これは最も重要な部分である。まず健康保険について言えば、日本は国民皆保険なので会社に勤めている人は誰もが健康保険に加入している。毎月一定の保険料を負担することで、病気になった時に治療費の本人負担は3割で済む。

 ところがこの保険料、会社が半分負担しているということは案外知られていない。そして、こういった公的医療保険には「高額療養費制度」という仕組みがあり、自分が負担する金額が高額になった場合でも上限が決められている。具体的に言えば、仮に入院して月に100万円の治療費がかかった場合、その3割は30万円となるが、実際に自分が負担しないといけないのは8万7430円だけだ(年収が約770万円以下の場合)。

 さらに言えば大企業などの場合、その会社の健保組合があると、付加給付という仕組みがあって、治療で一定金額以上かかった部分を健保組合が負担してくれる。これを使うと、場合によってはどれだけ治療費がかかっても、月額2万円とか3万円で済む場合もある。自分の会社の制度がどうなっているのかをよく調べることによって、民間の医療保険に本当に入る必要があるかどうかを判断でき、不要であるのならその分を貯蓄や投資に回すことで老後資金の準備ができる。

 生命保険も同様だ。団体定期生命保険がある会社なら、保険料はかなり安いので、それだけ入っていれば他の民間の生命保険に入る必要はないだろう。そもそも生命保険というのは自分が亡くなった時に生活に困る人がいる場合に加入するものだから、会社に入ったばかりの新入社員ならほぼ生命保険は不要だろう。

 また、公的年金には遺族年金という制度があるし、会社から弔慰金が出る場合もある。生命保険に入るのなら、そういったものを総合的に判断して足りないと思う部分に対して必要なだけ入ればよい。これによっても、かなり無駄な出費を防ぐことができるだろう。自社が提供している保険制度にはどのようなものがあるのかを、しっかり確認しておく必要がある。

(2)貯蓄、ローンなどの利子補給や奨励金

 また、医療や保険だけではなく、個人の資産形成にあたっても会社がさまざまな補助金や利子補給をしている場合がある。例えば、従業員持ち株会などは本人の掛け金に対して10%以上も奨励金を付与しているところは決して珍しくない。

 もちろん持ち株会は自社株に投資をするものなので、それなりにリスクはあるし、勤めている会社の株を持つというのはリスクが集中し過ぎることにもなるため、あまり多くの金額を注ぎ込むべきではないと思うが、それでも高い奨励金が付くのであれば一定の金額はやってもいいだろう。

 最近は社内預金のようなものがある会社はほとんどないだろうし、財形貯蓄もないところが多いと思うが、もしそういった社内での資産形成制度があれば、それに対する利子補給がついている場合もあるので、調べてみた方がいい。

 さらに住宅ローンなどについても、会社が一定の利子補給をしてくれる場合、低利で融資を受けられるメリットもある。昨今は低金利の上に税制優遇もあるため、そのメリットがあまり感じられないだろうが、将来金利が上昇した時などにはこういう補助があるのはありがたい。